「豊崎由美 書評の愉悦」について

書評講座に通ってるんです。

と言うとほとんどの人が「へえ……?」と不思議そうな顔をします。

書評ってなに? どうしてそんな勉強を? なんかの役に立つの? 

彼らのそう問いたげな表情を見て、私も、確かになぁ、と思います。本が好き、というのはわかるけれど、書評を書く、って、なんで? ですよねえ。「変わった趣味だね」と言われたこともありますが、私もそう思います。

では、変わった趣味、の具体的な内容をご紹介しましょう。

まず、毎月一冊、課題本とテーマが決められ、講師のトヨザキ社長や毎回お招きするプロの書き手の方も含め、全員が無記名で書評を書きます。その原稿に全員が得点を付け、最高点を獲得した人が書評王となる──これが、池袋コミュニティカレッジの一講座「豊崎由美の書評の愉悦」のシステムです。ポイントは、誰がどれを書いたのか分からないまま点数を付けるので、社長やゲストが書評王になれるとは限らないというところ。受講生の中にもプロのライターが何人もいますから、闘いの構図は実に複雑です。受講生VS社長&ゲスト、社長VSゲスト、プロVSアマ、古株VSニューフェイス……毎月第二土曜日、池袋西武9階の一室では、それぞれのプライドを賭けた静かな闘いが繰り広げられているのです。

大人になったら、日常生活の中で誰かにほめられることはすくない。ましてや王の称号をもらうことなどありません。しかしこの講座では、ほめられたり、王になったりすることができます。そのささやかな栄冠を目指して、受講生は今月も“変わった趣味”に没頭するのです。