『子どものことを子どもにきく』

子どものことを子どもにきく (新潮OH!文庫)

子どものことを子どもにきく (新潮OH!文庫)

これは私の大好きな本で、知人に子どもが生まれるとプレゼントしまくってます。

著者の息子が3歳のときから毎年1回インタビューをし、そのやりとりをまとめている。インタビューはふだんの会話とは一線を画し、近所の喫茶店でテレコを回して行われる本格的なもの。

冒頭のやりとりが印象的。喫茶店に入って、著者はたかしくん@3歳にメニューを見せるのだけど、まだ字が読めないことにすぐ思い至る。そこで「字が読めなくて困らない?」と尋ねる。この質問のストレートさにノックアウト。確かにそうだよねえ〜。

続けて、「ここがなんていう町か知ってる?」「いま何時かわかる?」と地名や時間を尋ねるが、当然ながらたかしくんはなにもわからないでいる。あまりになにもわからないのに、全然子どもが不安になっていないというその状況に、改めて驚くお父さん。大人が同じ状況だったらパニックになっちゃうよなあ。子どもという存在の不思議さの一面を的確にあらわしたシーンではなかろうか。

最初は3歳児らしく、とんちんかんなやりとりがおかしく可愛らしいのだけど、そのとんちんかんだったたかしくんが、どんどん知恵をつけてきて、いっちょ前に父親とサッカー論をぶったりするようになる成長ぶりが素晴らしい。成長することが頼もしくもあり、失われる幼さが惜しかったり。

著者は、子どもの率直な質問や時には偏った意見を真正面から受け止め、決して逃げない。ユーモアを交え、時には違和感を素直にぶつけて真摯に、応じていく。自分が同じ質問をされたらどう答えるかを考えてみるのも、なかなか楽しい。自分の子どもが大きくなったら是非インタビューしてみようと思うし、何より子どもが成長したときに親からこんなインタビュー集をもらったらうれしいんじゃなかろうか。

著者によるイラストもかわいくて、なんとも和める1冊であります。