「第3回ほぼA賞」実況中継 2

【『カツラ美容室別室』山崎ナオコーラ

がく「2点を入れてるてづさん、どうですか?」

てづ「この主人公がさ、家に帰ってきて牛乳を温めるところがたのっぽいね(笑)。」

こきりこ「そこで2点!?登場人物が友達に似ているから2点なの(笑)!?」

がく「ひでんかが結構辛口に評してるね。『現代の若男子の萎えっぷりをよく表していると思ったけど、文章や描写が壊滅的』だって。」

あさてぃ「会話がちょっとねぇ……。みんなこんなにつまらないことばっかり喋っている人たちと生活しているのかなぁ……?」

じょり「そこが逆にリアルなのかもしれないけどね。」

がく「あちゃりは好意的にこの作品を評価しているみたいだね。『肩に力の入らない文体で、さらりと、正確な描写をすることができる作者』って書いてきている。」

たの「あちゃりは青森の人のいない奥地で生活してるから、こういうさらっとした人の交流を描いた作品が良いと感じたのでは……」

「青森差別だっ(笑)!!」

じょり「描写はうまいのかもしれないですよね。でも心に引っかかるものが何も無い。」

こきりこ「桂さんが美容師なのにカツラであるっていう設定は必要性があったのかなぁ?」

てづ「王様のブランチで本人が言ってたけど、桂さんがカツラであるという設定は、単に読者を惹き付けたいだけみたいですよ。」

こきりこ「つかみなのか。」

たの「でも確かにタイトルを見た時にちょっとワクワクした。カツラ……」

あさてぃ「……来るよね、カツラ来るよね!って私もワクワクした。」

がく「じゃ、作者の思惑通りじゃん。俺はね、ナオコーラは絶対この作品の連ドラ化を視野に入れてるんだと思うんだよね。」

あさてぃ「確かに連ドラにしやすそう。」

たの「でもドラマ化しても、視聴率が初回15%で第2話が5.3%みたいになりそう。」

がく「でもキャストにもよるよ。」

じょり「主人公の『俺』は誰がいいだろう?」

がく「う〜ん。いのっち(V6)?」

「それじゃ盛り上がらないだろう(笑)!!」

がく「何も起こらないんだよな、この作品……」

こきりこ「登場人物がどれも魅力が無い。」

じょり「何も起こらない物語でもべつにいいんだけど。例えば柴崎友香さんみたいに……」

あさてぃ「そう、柴崎さんはグッとくる気持ちの言い回しとか『あ、そういうのわかる、わかる!』っていうような共感部分を作り出してくれるから、何も起こらないような作風でも大丈夫なんだけど、ナオコーラはそういう部分に欠けていると思う。」

じょり「すごく共感できるわけでもないし、すごく文章がうまいわけでもないし、ボーっとした感じに思えた。」

がく「褒めてみましょうよ。あさてぃさん、どうですか?」

あさてぃ「桂さんが故郷に帰るじゃないですか。そういう先があまり見えない展開に落とすのが面白いと思いましたね。」

たの「カツラの設定を2箇所しか活かせてないところに不満がありますね。何パターンもカツラを持っているのに、もったいない。」

あさてぃ「もっとカツラを使って笑わせてくれても良かったのにね。」

こきりこ「やっぱりどの人物にも魅力が無いなぁと思った。私は何も起こらない作風自体は好きなほうなんだけど、この作品には特に何かを感じるところが無かった。」

がく「今回こきりこさんは3点をつけたものがないじゃないですか。これは今回の候補作品の中に特に飛びぬけたものが無かったっていうことなのかな?」

こきりこ「う〜ん。小粒?」

てづ「前回の候補作と比べてびっくりしないですよね、今回の候補作は。なんか普通。」

がく「『ポンパッ』的な何かが無いですよね?」

じょり「今回の候補作を読むと『アサッテの人』が物凄く面白かったことがよくわかる。」

たの「(ビール瓶の栓を素手で開けようとしながら)俺は『セックスしとけばよかったな』って思うシーンがひとつもありませんでしたね(←作中の主人公の行動を反芻しながら)。主人公の行動や考えが唐突過ぎるところがある。」

てづ「突っ込みどころが結構あるんですよ。『俺の心臓の音で、俺のバスタオルがかたかた揺れた』とか。バスタオルはかたかた揺れないだろう、みたいな(笑)。いくらなんでもこれはないだろう、って。あとエリがお客さんの頭を殴るところとかあるけど、クビでしょう、確実に(笑)。血液逆流させた看護婦とか。」

「(笑)」

じょり「やっぱり頭の中で作り上げた中央線世界なのかも。」

こきりこ「イメージの中の中央線世界ね。」

(ここであさてぃさんの作ったサーモンタルトときんぴらごぼうが出て来て「もてる女の料理講座」が開講。)

じょり「もっとエリに共感できればよかったのに、この作品にはあまり共感させるような要素が無い。圧倒的に読者に共感させにくくしているよね。」

あさてぃ「抽象的な褒めだけど、バランスが良くて読みやすくはあるよね。でも会話の部分が乏しく感じた。日常生活でこんなにつまらない会話ばっかりしているかなぁ、って。」

たの「この作品って、桂さんが実家の美容室を継ぐという話なのか、それとも主人公の『俺』が……」

じょり「(きんぴらごぼうを食べながら)柚子!柚子が入ってる!!」

こきりこ「なにも聞いてないよ!この人はっ(笑)!!一所懸命たのが話しているのに!」

たの「いや、主人公が『俺』なのか桂さんなのかな、と思って。」

じょり「誰が主人公なのかじゃなくて、人物の関係性や距離感を書きたかったんじゃないのかな、ナオコーラは。」

てづ「友達関係を書きたかったみたいですよ。」

「ブランチネタだ(笑)!」

がく「で、これは受賞するんですかね?」

あさてぃ「可能性はあるよね。おじさま達の心を射止めそうというか、青山七恵の臭いというか……」

たの「それを言ったら『空で歌う』は伊藤たかみの臭いがしますよ!」

「おお〜!そうかぁ。そうだねぇ〜!」

あさてぃ「まだ話は終わってないよ、まだ先に何か続きますよ、っていうラストの書き方も芥川賞っぽい感じがしないでもないよね。私はナオコーラが受賞して不思議ちゃん口調で会見するのをちょっと見てみたい気がするなぁ(笑)。」

「『ナオコ〜ラ、ですっ↑」って(笑)?」