2月23日(土)直美を観たの巻

16持30分、藤山直美中村勘三郎の芝居『わらしべ夫婦双六旅』を観に、新橋演舞場へ。観劇メンバーは直美ファンクラブマガハ支部のF山さん、A谷さん、K瀬さん。わたしとその3人は大変な藤山直美ファンで、ずいぶん前になるけれど、下北沢の「Zaji」という酒場で本人と偶然遭遇し、握手をしてもらったこともあるのだ。
が、そんな熱烈な直美ファンをしても駄作としか言いようにない芝居だったんである。ラサール石井という人は演出の才もセンスもまったくないのだから、もう芝居に関わるのはおやめになってはいかがか。われわれは、どんなに台本や演出がダメでも直美さえ観られればいいと思っているのだけれど、それにしたってひどすぎだ。
中島京子『平成大家族』(集英社)読了
1990年に今はなき文芸誌「海燕」でデビューし、最初のうちこそ芥川賞候補に挙げられていたものの、最終的には『対岸の彼女』で直木賞を受賞した角田光代。デビュー作『イッツ・オンリー・トーク』でいきなり第129回芥川賞候補になり、その後も二回候補に挙がったものの、一旦直木賞の候補にされてから『沖で待つ』で芥川賞を受賞した絲山秋子
そういう純文学とエンターテインメントどちらとも分類しがたい角田・絲山タイプの作家がどんどん増えている。たとえば、田山花袋の『蒲団』を本歌取りした『FUTON』でデビューした中島京子。出だしこそ迷わず芥川賞陣営に入れることができる資質の持ち主だったものの、近年の作風はどちらかといえば直木賞寄り。そういう売れ筋の小説を編集者が書かせたがる裏の事情もあろうが、その要請をいともたやすくクリアできる達者さが、いかにも角田・絲山路線作家なんである。
たとえば、歯科医を引退した龍太郎を当主に戴く緋田家の春夏秋冬を描いた『平成大家族』。読みながら笑ったり、ホロリとさせられたり、中島京子というセンスのいい作家の手のひらの上で転がされるのが心地よい連作短篇集です。龍太郎(七十二歳)と、その妻・春子(六十六歳)。春子のボケかけた母・タケ(九十二歳)。十五年間引きこもっている長男・克郎(三十歳)。夫の聡介(四十四歳)が事業に失敗したせいで息子・さとる(十四歳)共々一家三人で出戻ってきた長女・逸子(四十歳)。離婚した上、お腹の中に売れない若手芸人の子を宿している次女の友恵(三十五歳)。お腹の中の子まで含めれば総勢九名にも及ぶ緋田家に起こる出来事を描いた、これはアンチ核家族小説なのだ。
緋田家の個性豊かな面々のプロフィールを、ユーモラスかつ鮮やかな筆致で描き出す11編が収められた、この連作短篇集を読んでいると、脳内はすっかり東芝日曜劇場化。1960〜70年代にたくさん生まれた良質なホームドラマがお好きだった年配の方におすすめできるのはもちろん、ばらばらになった家族像を殺伐と描く小説が多い昨今にあってこのどこか懐かしい読み心地は逆に新鮮なので、20代、30代の読者にも楽しめるんじゃないかなあ。

平成大家族

平成大家族