『パパの極意』

パパの極意 仕事も育児も楽しむ生き方 (生活人新書)

パパの極意 仕事も育児も楽しむ生き方 (生活人新書)

ひっさびさに、素晴らしい!っていう育児関係本に出会いました。

3人の子どもの父親である著者は、出版業界など9回の転職(!)を経て、父親の育児支援を行うNPO法人ファザーリング・ジャパン」を設立。自身の育児経験を踏まえて、世の中のパパがもっと育児に取り組めるようになる環境づくり、そしてパパ側の意識改革を図っている。先日開催された「パパ検定」がテレビなどで取り上げられてたので、それなら聞いたことある!という人も多いかもしれない。

著者が父親の育児参加を推進しようとする理由は、だって子育てって楽しいんだよ! という至ってシンプルなもの。そうそう! もちろん「母親だけだと負担が大きい」とか「子どもは妻だけじゃなくて夫婦の子」とか男女平等が云々とか、まあいろいろあるけれど、なんかそんな堅苦しいことじゃなくて、こんな楽しいことをママだけのものにしておくのはもったいない、と来たもんだ。すでにここで拍手喝采

このご時勢、ただでさえ育児なんてダークなイメージがあるんだから、楽しいからこっちへおいで〜と、著者の言うような“天の岩戸”方式で他の人をおびきよせないと(笑)。

本書の大半は、著者が実際に経験してきた子育てに基づいて書かれている。特徴的なのは、父親の役割について家庭や職場のみならず、地域においての重要性にも注目しているところ。なにかと疎まれがちなPTAや学童の父母会などにも著者は積極的に参加し(PTA会長までやってる)、地域がかりで子どもたちを育てようと取り組んでいる。ここでたいせつなのは、育てるのは自分の子だけじゃなくて、よその子も一緒に育てる心積もり。お父さんたちが企画・実行したキャンプなんて、読んでるだけで楽しさがびしびし伝わってくる。

また、お父さんの仕事と育児のバランスの取り方も必読。「仕事が忙しくて……」と言ってるけど、本当に忙しい? 絶対に1日たりとも定時であがれないの? 育児時間の捻出方法について具体的な根回しの仕方など、明日からにでも実行できそう。さらに、ファザーリング・ジャパンでは、大手企業に男性社員の育児参加についてのアンケート調査を行っていたり、希望する企業には父親講座を開催しにいったりしている。その様子もなかなか興味深い。

それにしても、実際に育児中の身としては、読んでいて「そうそうそうそう!」と相槌を打ちたくなる箇所がいっぱい。たとえば、父親がやる家事で多いのが〈ゴミ出し〉であるというくだり。

しかしパパたちの言う「ゴミ出し」の内容を聞いてみると、往々にして、ママが「ハイ」と差し出したゴミ袋を、ただゴミ置き場に持って行くことを指している。それは、「ゴミ袋移動」であって「ゴミ出し」ではない!

確かに!(笑)

それから、なかなか他人に仕事を振れない、そのために労働時間が長くなりがちなカイシャ人間にも〈そうそういませんから、世界とか国家を動かせる人って。〉と冷静なツッコミ。「俺がいなくちゃ〜」とか言ってる人に限って、いなくても普通に仕事回ってたりしますよね(爆)。

そんなこんなで、これから子どもが生まれるというパパ予備軍はもちろん勉強のために、育児奮闘中のママさんたちも読んでダンナを啓発し、さらには育児中の部下をもつ上司のみなさんにも読んでもらって理解をしていただきたいなーという、全方位的に強くオススメな1冊なのでありました。