『少子』

少子 (講談社文庫)

少子 (講談社文庫)

結婚も妊娠も夢のまた夢の独身時代に、『負け犬の遠吠え (講談社文庫)』で酒井順子のおもしろさに遅ればせながら開眼して読んだ本。

少子化が進んでヤバイ!と叫ばれている昨今、出産どころか結婚もしていない著者が「すいませんねえ……」と肩身を狭くしつつも、じゃあなんで子どもを産まないのかをあれこれ考察してみた。

考えうる理由別に章立てしてあるんだけど、「痛いから」「面倒くさいから」「うらやましくないから」とか、母性マンセーな人たちが聞いたら「フザケてんの!?」と憤死しそうな理由ばっか(笑)。でも確かに痛いし面倒くさい。それがネックになってる面は絶対にある(あった)。

子どもって産んだら最後、「やーめた」ができないのが、出産をためらう最大の理由なのではなかろうか。そりゃそうだ。そんな簡単に「やーめた」ってされたら困る。私も妊娠したってわかったときに「戻れない〜」と思ったですよ。

一見フザケてんだか真剣なんだかな考察ののち、著者はちゃんと対策も考えている。「男に産んでもらう」「戦争を始める」。もう本を放り投げちゃう人もいるかもね。

でも荒唐無稽なように見えて、本質は突いている。子どもを持てる可能性がありながら持たない女性たちの「なんで産まなきゃいけないの?」という、非常に初歩的ながら、訊くことすらタブー視されている疑問。そこにあえて突っ込んで考えてみたという行為自体は評価されてよいと思う。

私自身は子どもを持つことに特にあこがれていたわけではない。でも実際産んでみると、今までとは違う楽しさがある。だからといって「いいわよ〜子どもは!」なんていう無神経なことを言うような真似だけはしたくない。子どもを持つことによる“損失”をかつて心配していただけに、子どもとともに得たものだけをクローズアップする気にはなれないのだ。

本書には別に明確な結論があるわけではないけれど、自分が持っている不安要素を明確にできるという意味でおすすめ。あと純粋に笑えます。

追伸:せっかくラブコールをいただきましたが、しばらく本読む時間が取れそうにない〜。次回の更新も大丈夫か!?