ちゃんとたべなさい

ちゃんとたべなさい (世界の絵本コレクション)

ちゃんとたべなさい (世界の絵本コレクション)

 さて、一発目だ。昨日も書いたとおり、私は小学校で読み聞かせのボランティアをやっていて、この四月で三年めに突入したところである。よし、今回は過去二年間の活動で、いちばん子どもたちに受けた作品を紹介しちゃえ。もちろん毎回おもしろい本を選んでいるわけだが、中でもこの本は最強。なにしろ、唯一「アンコール」の声がかかった本だからだ。いまだに、学校に行くと「あれ読んで」の大合唱になる。しめしめ、かかったね、君たち。

 その本とはケス・グレイ・文、ニック・シャラット・絵の『ちゃんとたべなさい』(小峰書店)である。翻訳者は児童書を多く手がけている吉上恭太。主人公はデイジーという女の子だ。きらいなまめを皿の上に残したまま食事を終えようとするデイジーは、ママから「おまめもちゃんとたべなさい」と命じられても毅然と言い返すのである。

「おまめ、だいきらい」

 ママは、懐柔策に出る。

「おまめをたべたら、アイスクリームをあげるし、いつもより30ぷん、おそくまでおきていてもいいから」

「おまめをたべたら、アイスクリームをあげるし、いつもより30ぷん、おそくまでおきていてもいいし、おふろにはいらなくてもいいから」

 だが、デイジーの態度は変わらない。弱ったママが次々に譲歩の条件を出してくるのが可笑しいのである。譲って譲って、最後にはとんでもないことになってしまう。読み聞かせのときは、そのエスカレートぶりが子どもたちに大受けした。これからチャレンジする人は、ママの台詞はなるべく一息で読みきるようにしましょう(三石琴乃でも難しいぐらいに最後は長くなるが窒息覚悟でがんばること)。そして、デイジーの台詞はあくまで毅然と。
「おまめ、だいきらい!」

 デイジーとママのコンビが登場するおはなしは、四冊が翻訳されているが(本国イギリスではさらにDaisy and the Trouble with LifeとDaisy and the Trouble with Zooが刊行された)、どの作品でもママは頼りない雰囲気を漂わせている。パパの話題が出てきた記憶がないから、もしかするとシングルマザーなのかもしれないな。そんな(もしかすると)母娘二人の親密な生活を、笑いたっぷりに描くシリーズなのである。

『ちゃんとたべなさい』は「食べ物の好き嫌いを大声で言う」話だったが、『ほんとにほんと』でデイジーは、ベビーシッターに嘘を言ってママの不在という自由を謳歌していた。つまりどの話でも、彼女はちょっとだけ悪い子に描かれているのである。四六時中いい子であることなんてできるわけがない。本当は誰だって羽目を外してみたい。そういう気持ちをデイジーは代弁してくれているのですね。そりゃ、子どもに受けるよな。