月見草DNA選手とヒーローインタビューの出来

ウチスタ(お家がスタジアム、部屋観戦でドキドキする)

4月の中盤戦。
地味な履歴や長い下積みを乗り越えた、パ・リーグらしい月見草DNA*1の選手達が、続けざまに嬉しいヒーローになりました。

◇4月12日(土)…ホークス・小椋真介投手。肘の靭帯断裂という大怪我から復帰して、プロ入り10年目にして公式戦初勝利。*2
◇4月16日(水)…マリーンズ・角中(かくなか)勝也外野手。月給12万円だった四国アイランドリーグ出身選手として第1号のホームランで勝利に貢献。*3

◇4月19日(土)…ファイターズ・佐藤良宏外野手。二軍で同期の選手達の用具係をしたりしながら、ようやく7年目にして、公式戦初安打が初ホームラン。*4

◇4月22日(火)…ファイターズ・星野八千穂投手。マチュア時代、社会人のJR北海道で駅員さんもしたりしながら野球を続け、ドラフト7巡目という滑り込みでプロ入りして27歳で初勝利。

◇4月24日(木)…ファイターズ・小田智之内野手11年目のベテランだが、ここ数年低迷していたのが、生涯初のサヨナラホームラン

こういう地味な選手たちが、失礼ながら<本人もビックリ!?>のヒーローとなったなら、
やっぱりお立ち台では、見てる方の胸にじんとくるインタビューを
期待するのが、人情というもの。

ところが、このヒーローインタビューってやつはなかなかクセ者で、出来栄えはインタビュアーの腕前次第。
聞き手が、選手のことをよく知らなかったり、試合の流れがわかっていなかったり、型どおりの質問しかできなかったり、人情の機微を忘れていたりすれば、たちまちどっちらけです。

先に出た質問に対して、「こうなったのでこうしようと思っていた」と選手が言ったそばから、「どういう気持ちで打席に入りましたか?」などと重ね聞きしたりすると、そのぎくしゃくに、ついイライラしてしまうもの。
確か去年のクライマックスシリーズ。勝利投手のダルビッシュが、手元のメモを棒読みして重ね聞きした女性アナに、「…だからさっきも言いましたけど…」って冷ややかに答えたのを聞いて、「そーだ、そーだ!」と、妙に溜飲が下がったりしましたっけ。
最近では、ライオンズのGG佐藤に決め言葉の「きもてぃー!」を二度言わせようとしつこく催促してキッパリ断られたお立ち台、マリーンズの清水投手に、あざとく亡くなった夫人の話をさせようとして、あっさりイナされたお立ち台など、どっちらけ指数の高いインタビューでありました。

とても頭の反射神経が必要な大変なインタビューだろうなと、十分察しがつくのです。
でも、やっぱり、その日の感動のシメですもの。心ある言葉で仕上げてほしいと思うのです。とくに、長い努力の末にようやくお立ち台という晴れ舞台にあがった、5人の月見草DNAの選手たちのような場合には…。

今年はありがたいことに、ヤフー動画の熱球ライブで、ヒーローインタビューの録画を見ることができます。
角中選手と小田選手は、なかなかいい味が出ておりました。
不慣れな晴れ舞台にとまどい、質問される度にいちいち入る、「…?…」という間がほどよいユーモアになっている角中選手。「(ホームランが)練習でも滅多に入らないからびっくりしちゃって…」と正直すぎる感想で笑わせてくれて、ハイになったり涙ぐんだり、表情や言葉から感情が素直に伝わってくる小田選手。
見ていてつい微笑んでしまう、温かいインタビューでした。

ちょっと残念だったのは、小椋選手と星野選手。お仕着せな質問で、その日の試合の結果のことばかり。彼らの中に溜まっているであろう、深い感慨を引き出すことのないインタビューでした。
小椋選手は、ケガから復帰した小久保選手が一緒だったのですが、インタビュアーの気持ちが小久保選手に向かってしまっていたようです。マリーンズやファイターズの複数インタビューでは、インタビュアーもファンも他の選手も皆、月見草DNAの選手に花を持たせようというムードになっていました。それだけに、<10年目の初お立ち台の小椋より、戻った小久保が大事>というインタビューの図式は、なんとなく、今のホークスの頭の固さ、序列的なムードを象徴しているようにさえ感じてしまったり。

最後に佐藤選手のインタビュー。これが、出色なんです〜!。
http://streaming.yahoo.co.jp/special/sports/pacific_league2008/team/schedule.html?t=f&m=4
(↑ファイターズ4月19日です。あ、ぜひ各選手のインタビューも聞いてくださいね!
http://streaming.yahoo.co.jp/special/sports/pacific_league2008/team/schedule.html?t=m&m=4 マリーンズ4月
http://streaming.yahoo.co.jp/special/sports/pacific_league2008/team/schedule.html?t=sb&m=4 ホークス4月 )
佐藤選手のあだ名は<スーパー君>とか。
ファイターズの彼の同期生で、ケガの手術でリハビリ中の江尻投手がブログを書いています。同期で残っているのは、二人だけだそうです。
http://ameblo.jp/ejiri-shintaro/day-20080419.html

動画が見られない方のために、ちょっと様子をお伝えすると…。

先に勝利投手の藤井選手がインタビューされました。トレード後初勝利だった藤井選手も、言いたいことはたくさんあったでしょうに、短い言葉で佐藤選手に譲ってくれたようです。
そして、何を聞かれてもなかなか言葉にならないでいる佐藤選手に、拾ったファンがホームランボールを届けてくれます。
記念のボールを壊れ物のように受け取り、両手で大事そうに大事そうに撫でる佐藤選手。その表情だけで、長い苦労がしみじみ伝わってきます。
やっとのことで、「…長いこと芽が出なかったのに見捨てないでくれて…」と絞り出す、思い出をつぶやくような関係者への感謝の言葉が、じんじん胸を打ちます。

この後、また彼がお立ち台にあがるときが来るのか…は、神のみぞ知るなんだなあ。
大変だなあ…。キビしいなあ…。
がんばれよ…。

いつまでも語り草になりそうなインタビューでした。
私はもちろん、
つい、ほろり…。

*1:野村現イーグルス監督は、現役時代、記録を打ち立ててもセの王・長嶋に比べ地味にしか扱われない自分を<月見草>と例えました。

*2:http://sportsnavi.yahoo.co.jp/baseball/npb/column/200804/at00016970.html ←新聞記事。

*3:http://www.ninomiyasports.com/sc/modules/bulletin02/article.php?storyid=1238

*4:http://www.hokkaido-np.co.jp/news/fighters/88295.html