お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (勝間和代/光文社新書)

お金は銀行に預けるな   金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)

お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)

 こんだけ売れてる本に、いまさら何を言うことがある? というわけで、内容についてはググるが吉。ここでは(ベストセラー全般にあてはまることだけど)、「この本が売れてるっていうことは、どういうことなの?」ってことをちょっと考えてみたい。

 で、この本に何が「書いてある」かというと……
1.分散、分散、分散。株と債券、日本と海外。
2.インデックス型の投信を4種類各1万円分、積み立てで買え。
3.住宅ローン? 不動産に投資するなら賃貸でREITのほうがマシ
4.個別株? プロに勝てると思うな。素人はおとなしく投信買ってろ。
5.投資するカネがない? 家買うな。クルマ買うな。保険見直せ。
 えーと、このくらい? 

 これが「ああそうだったのか」「目からウロコが落ちた」……そう思えるなら、いますぐこの本を買いなさい。いや、マジ。だって「はじめに」に書いてあるんだよ、「目からウロコ」なら幸いって。
「……なにあたりまえのこといってんの?」 そう思う? 思うよね? ああ、ほっとした。

 というわけで、ホントに「あたりまえのこと」を書いてあるんだよ、この本。でも、なにが「あたりまえ」なのかということさえ、定かでないのがこの世の中。だって、「あるある大事典」をホントに信じてた人っているんでしょ? ふつーの常識があれば「納豆でダイエット」がホントかどうかくらい、わかるってば。ところがどっこい、「ダマサレタ!」って大騒ぎしちゃう人が大勢いるんだから。
 もちろんカネ情報だって「主婦がFXで3億円もうかった!」みたいな本ばかり(って著者もこの本の中でもグチってるけどさ)。だけど、健康ネタとちょっと違うのは、『お金は銀行に……』みたいな「あたりまえのこと」書いてる本でも“ベストセラーになる”ことだと思うんだよ。やっぱり人間、「健康」よりは「カネ」のほうを真剣に考えるんだなー。

 最終章の最後のあたり、「与党の構造改革が成功したから日本全体の効率があがってまがりなりにも不況を脱した」とか書いてあるけど、そーいうところは賛成しない。企業不祥事が目立つ(ように見える)のをグローバル化のせいにするあたりも賛成しない。この本のいいところは、ものすごく当たり前の内容を、ものすごくキャラ立ちしてる人が、新書というフォーマットで書いた、というとこね。
 こういう「あたりまえ」のことが書いてある本が売れることを喜ぼうよ。『病気にならない生き方』とか『食品の裏側』とかが売れるより、よっぽどいいじゃないですか。