“ダメな2枚目”を見守る愉悦 <一場の豹変を待ち続ける 3.>

イケメンウォッチャー(純イケメンから逆イケメンまで、気になる選手を語る)

去年、ノムさんにラストチャンス宣言された登板から、続けざまに周囲を「オッ?!」と言わせる投球で6勝を挙げ、「もしや…」「まさか…」とドキドキさせておきながら、オフには目を痛めてキャンプに出遅れ、結局いまだ目覚めぬ<つっころばし・一場>
ひ弱に見える…もとい、ひ弱にしか見えないマウンドでの姿と実績を、何度でも忘れさせてしまう、妙にしぶとい<崖っぷち運>の男
変わってほしい。「おお…あの一場がとうとう…」と思わせてほしい。
でも、「とうとう…」どうなってほしいのかと考えだすと、負けん気でなぎ倒すダル*1タイプ、気合で封じ込める和巳(かずみ)*2タイプ、冷静さで翻弄するニャー*3タイプ、度胸で打ち取る武久(たけきゅう)*4タイプ……どれも、「無理だよね」(==;)…と嘆息してしまう。
<豹変した一場>を夢見ていながら、具体的なイメージを持つのはもうたーいへん。
だからウォッチャーはつい、「なんでもいいから、がむしゃらに投げればいいんじゃい!」*5などと無責任な(あるいはヤケのやんぱちな)発言に至ったりすることになります。
望ましい変身の具体例を、皆様にお伝えできない私。ここでまた、歌舞伎の二枚目を思い出しました。
実は歌舞伎に、もうひとつ、<つっころばし>とは違うタイプの二枚目の役があるのです。
それは、ぴんとこな。あ、いきなりググったあなた。六本木ヒルズの回転ずし屋さんのことではありません。念のため。
同じ優男ですけれど、ぴんとこな>の方は、芯が強くてきりりとした二枚目。そして、じっと我慢をする二枚目、だそうです。例えば、と挙げれば、<つっころばし>の役は、近松物の紙治他いくつも探せるのに、なぜが<ぴんとこな>の方は、ひとつの役しか見つかりませんでした。
福岡貢(みつぎ)という、元武士の若者です。
上司の家老のバカ息子が質入しちゃった家宝の刀を取り戻すという大儀があって、廓(くるわ)で屈辱的な扱いを受けるのを我慢に我慢して刀を取り戻したのに、その刀の妖気に中(あた)って、10人斬りという無差別殺人を繰り広げた揚げ句、なぜか最後は正気にもどって笑顔という、ムチャな芝居のムチャな主人公らしい。
ま、芝居の筋書きはどおでもよろしい。この福岡貢。マジメで頼りがいがあって優しい上に姿もいい。そんな貢が、嫌がらせをされて腸煮えくり返りながら耐える姿、しだいにピリピリとキレかかってくる姿、妖刀に憑かれてぶちキレちゃった姿。片岡孝夫(現仁左衛門)あたりが演じると、惚れ惚れするほどカッコイイらしい。<ぴんとこな>の真骨頂なのだそうな。
…これです。
ウォッチャーが心密かに待ち続けているのは、<ダルや和巳やニャーや武久のような一場>ではなく、きっと、<ぴんとこな・一場>なんです。
メッタ打ちやファーム落ち、ファンの罵声やノムさんのぼやき。そんなこんなにぐっと耐え、ある日とうとう、妖刀ならぬ白球を手にぶちキレて、バッター10人斬りしてみせる一場。マジ見てえ〜!! です。

<つっころばし>的な一瞬の高揚ではなく、<ぴんとこな>の、内に秘めた強さがマグマになって外にあふれ出したような<豹変>。

やっぱり…

一場ウォッチャーは今年も待ってしまうんだよなあ…。そうに違いありません。


一場投手のフォトギャラリーの頁(イーグルスホームページ)
http://www.rakuteneagles.jp/expansion/entertainment/photo/

・<つっころばし>について(事典ご紹介)
http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/edc_dic/dictionary/dic_ta/dic_ta_24.html
・<紙治>について(事典ご紹介)
http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/edc_dic/dictionary/dic_ka/dic_ka_69.html
・<ぴんとこな>について(事典ご紹介)
http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/edc_dic/dictionary/dic_ha/dic_ha_13.html
・<福岡貢>について(説明してくださっています)
http://www2.rosenet.ne.jp/~spa/kabuki/html/ess/ess122.html

*1:ファイターズ・ダルビッシュ

*2:ホークス・斉藤和巳

*3:マリーンズ・成瀬

*4:ファイターズ・武田久(ひさし)

*5:某虎チームファンあるいは鯉チームファンのオヤジ風に