―バレーボールとテレビ ―バレー五輪最終予選後記2.―

ウチスタ(お家がスタジアム、部屋観戦でドキドキする)

日本開催のバレーボール国際大会で繰り広げられるテレビ側の外連(けれん)に対し、バレーボールファン、スポーツファンが抱く嫌悪感については、ネットを探していただけば、書き尽くされているので、詳しく述べません。
何年か前のこと。ある国際大会の男子の最終日に、久しぶりに会場に行ってみました。
閉会式の準備の間、テレビでは流されない各国選手のファインプレー集が、大スクリーンに映し出されました。これまた久々に見た、超一流選手の超一流プレーの数々。
その中で一番観客が沸いたのは、一番見栄えの地味なプレーでした。ワンタッチでコート外に飛んでいったボールを追って観客席の手前まで走りながら、バックトスで味方コートまで返すというそのプレーは、派手に観客席に飛び込んだわけでもなく、フライングレシーブの持つアクロバティックな華々しさもありません。でも、会場のファンはみんな、そのプレーの難しさをよーくわかっていて、「おお〜!」とどよめき、ひときわ大きな拍手を送ったのです。
その拍手は、歌い踊ったアイドル歌手へのものより大きかったし、DJに煽られて起こったのでもありません。
ああ、やっぱりみんな、バレーのいいプレーを見たくてここに来ているんだなあ。
なんだかちょっと感動して、暗い場内を見回してしまいました。それと同時に、このプレーを見られたのがほんの一部のファンでしかないことを、しみじみ切ないと思いました。
こんなに大々的な大会が開催され、テレビが中継しているっていうのに。なんて不幸なバレーファン! 
その大会の放送局は、中継の拙さ・心無さをファンに一段と酷評されているTBSでした。でも、私が感動したファインプレー集もテレビカメラが捉えたものだとしたら、偏った中継をする側の中にも、本当はもっとバレーそのものの魅力を伝えたいと思っている人は少なくないのかもしれません。
大勢の人が、もっとバレーがスポーツらしく扱われることを望んでいる。それなのに、なぜ変わらないのでしょう?

一方には、もちろんテレビ側にプライドが無いのです。
そして、もう一方には、バレーボールの現場側にプライドが無いのです。

盛り上げてもらっているのだから、メジャースポーツとして扱われているのだからと有り難がっているから、一線を画すことができない。多少迷惑だったり、疑問をもったりしても、受ける恩恵を考えると、もうやめてくれと言えない。
そりゃね、FIVA(国際バレー連盟)も、日本のテレビ局からの放映権料は大きな魅力でしょう。JVA(日本バレーボール協会)も、テレビに手を引かれたら一気にマイナースポーツに転落するという危機感があるでしょう。選手達も、ちやほやされる方が嬉しいでしょうし、芸能人ともお近づきになれた方が楽しいでしょうし、うまくいけば引退後の就職口のパイプにもなるかもしれないし。ずっと仲良くしていたいでしょう。
でも、よーく考えていただきたい。
もし、これが世界のサッカーの舞台だったら…。サッカーの一流選手達がこんな大会やテレビ中継を許すなんて考えられるでしょうか? 「おいおい、勘違いしないでくれ」と言われそうじゃないですか? 「盛り上げてくれるのはありがたいがね。スタジアムの中の主役は、俺たちと俺たちのゲームだ。他の誰でもない。他の何かでもない。間違うなよ」と。プロ野球も、いろいろイベントをしたり、チアガールやマスコットが試合を盛り上げたりしていますが、それもあくまで脇役です。
バレーボールだって、主役は選手とゲームだ、と胸を張って言えるスポーツのはず。現場はもっともっとプライドを高く持つべきではないでしょうか。
2006年世界バレーの大会が、外国勢同士が対戦する地方開催試合の集客不足で赤字を出したというニュースも、聞いたファンは一様に当然の結果と受け止めています。テレビとの歪んだ関係はじわじわと、バレーというスポーツに悪い影響を与えていくでしょう。
蜜月と思っていたら腐れ縁。てなことにならぬうちに、「今までありがとう。感謝してる。でも、もう…」と言う勇気をふるってほしい。切にそう思うのであります。