☆番外編☆ 「ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!」(2007/英)

あるうららかな春の午後、のどかなイングランド中部のローカル線に乗った時のこと。ディーゼル車(?)の2両編成、ドアは手動の古びた車両には、乗客は私を含めて3人ほどしか乗っていませんでした。そんなのんびりした光景に激しく似つかわしくなかったことは…

車掌がパンク青年だったのです。

時はすでに90年代。オルタナ全盛期に真っ赤なモヒカン、安全ピンのピアス、腕には刺青で皮パンツにDr.マーテンズのワークブーツのそのいでたちは、極東の観光客(私)でさえも恥ずかしいものが。しかし彼はその格好で真面目に仕事をこなしていたのでございました。ピストルズの破れTシャツの上に提げたチケット機械と、切符拝見に来なかったら絶対車掌と思わなかったけど(笑)。

のっけから思い出話で恐縮ですが、このように「ど田舎でパンク」、「たんぼでゴスロリ」、「農協でデスメタル」など、「あんなところでこんなこと」という状況は、往々にして笑えてこっぱずかしくて微笑ましいものです。それが極端であればあるほど爆笑の度合いも大きくなろうというもの。で、本題。いつもはスットコ映画にツッコミを入れるこのコーナーですが、今回は番外編として、7/5公開の<傑作>新作映画、『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!(公式HP http://hotfuzz.gyao.jp/)』を強力にお薦めいたします。

<ものがたり>
警察学校を優秀な成績で卒業し、ロンドン警察でも抜群の検挙率を誇るエリート警官ニコラスは、その有能さがアダとなり、ある日突然昇進を理由に転勤を命ぜられる。しかも勤務地は、犯罪皆無ののどかな田舎町。彼女にも振られて傷心のニコラスだったが、到着早々住民のユルさに辟易しつつもマイウェイに任務を遂行。そんな彼を煙たがる同僚達。唯一、署長の息子のダニーだけは「都会でアクション映画さながらに悪党をやっつけていたクールガイ」として尊敬のまなざしで見つめていた。そんなボンクラと組まされれ辟易しながらも、町の平和に目を光らせていたところ、ある日異様な交通事故が起きたのだった…。

本国イギリスはもちろんのこと、世界各国で大好評だった前作のゾンビコメディ『ショーン・オブ・ザ・デッド』がDVDスルーに終わった日本。一部のファンの間で始まった署名運動から今回晴れて劇場公開へとこぎついたこの作品を、1人でも多くの「面白いものが好き」な方に是非観て欲しい!!!!!

局地的に騒がれているように、確かにこの映画には監督の「映画魂」が炸裂!随所に「パロディ」ではなく「愛のあるリスペクト、またはオマージュ」がちりばめられていて、元ネタを知ってれば確かにその分お得ですが、はっきり言ってそんなことを知らなくても十分楽しめます!!! イギリス公開週末の興行収入はなんと12億3千万円!さすがお笑い大好きな英国人。

昨年の『俺たちフィギュアスケーター』の意外なヒットのように、監督を知らなくても俳優になじみが無くても大丈夫!諸所に張られた伏線が次々に回収されていく小気味よさは、ミステリファンにも大満足!!セント・メアリ・ミード規模のコミュニティで起きる連続殺人は、予想外に本格。テイストとして、ミネット・ウォルターズのファンの人なんかには特にお薦めです。

映画を観て人生を見つめなおしたいとか、感動の涙を流したいとか、エコロジーについて考えたいとか言う人には全くお薦めしませんが、「とにかく大笑いしてびっくりしてスッキリしたい!」という方ならまずコレですよ!!!!! 「田園風景で○○なXX」をご堪能下さい!

最後に一つだけ蘊蓄。写真は作品に出てくるスーパーマーケットの駐車場の裏手です(現地にて筆者撮影)。かつてエドガー・ライト監督はここで働いていました(笑)。劇中で、本人がカートを押しているシーンが一瞬映ります。見つけたらラッキーと思ってください(笑)。