エース岩隈“完全”復活 ―割れなかったガラス 1.―
イケメンウォッチャー(純イケメンから逆イケメンまで、気になる選手を語る)
<ルンバ>。交流戦の後半、旋風を巻き起こした言葉*1であります。なんとも軽やかな響き。しかも抜群に重宝。<ルンバな盗塁>とか<ルンバな攻撃>などと聞けば、「なるほど…要するに、見てる方の開いた口が塞がらんようなプレーだったってことね…」と、すぐに想像がついてしまうのです。いやいや、それどころか「ルンバ…」とつぶやくだけでもう、十分わかっちゃうのです。
このステキな野球用語(?)の生みの親が、イーグルスの野村監督。激務を続ける体力とともに、人々が楽しめるコメントを連日発信できる、頭脳反射神経の若さにもつくづく感心。脱帽なのであります。
そんな野村監督に率いられたイーグルス。交流戦では、終盤こそ息切れしたものの、ぎりぎりまで優勝争いに加わり、「本当に油断のならないコワいチーム」になったことを、セ・リーグ相手にも証明してくれました。
そして、去年に比べ格段に安定した戦いぶりの中心になっているのが、戻ってきたエース、岩隈です。開幕当初こそ、ゲーム中盤でぐらつく場面も見られましたが、途中からはそんな姿も影をひそめました。
忘れられないのは、4月10日、ダルビッシュとの凄い投げ合いとなった試合と野村監督のコメント。ネット中継で観戦していたのですが、この日の両エースはともに絶好調でした。が、完封したダルに対して岩隈は1失点し、イーグルスの敗戦となったのです。試合後、野村監督は岩隈の好投をねぎらうだろうと思っていたのに、口をついて出たのは失った1点についてのボヤキの言葉でした。
二人とも相手打線を無安打に抑えて進んだ6回、先にダルがヒットを打たれます。続く7回も1死からヒットを打たれて迎えたのが、この時点で打率4割近かった4番の山崎。誰もが「この流れはヤバい…」と思うムードでしたが、渾身の投球で併殺打に打ち取ったダル。吠えながらマウンドをおります。大ベテランの強打者相手に「打てるもんなら打ってみろ!」という投球でした。
その裏、岩隈は先頭打者の森本に初めてのヒットを許します。送りバントで2塁に走者を進められたので、3番稲葉はゲッツー狙いで1塁を埋めるために敬遠。これは当然の策でした。この日の分かれ目は次打者4番高橋のときにやってきます。意外性があって勝負強い選手ですが、打率は2割7分台。前2打席は完璧に打ち取っていました。その高橋に対し、ボールが先行した岩隈は、粘られた末に四球を与えて満塁としてしまったのです。結局次のスレッジに外野フライを打たれ、ヒットは1本で決勝点が入りました。
結果論かもしれませんが、高橋の四球でサードに走者が進んでいなければ、無失点で抑えられた可能性が高かったでしょう。
http://baseball.yahoo.co.jp/npb/schedule?t=d&d=20080410
(↑この試合の記録。<ハイライト>で動画が見られます。<結果>から<成績>で、各回の攻撃状況もわかります)
この日までの岩隈は、3試合で四球はなんと1個しか出していません。抜群の制球力を誇っていました。それが、高橋への四球はこのゲーム中だけで3個目。野村監督は、この高橋への四球に対してボヤいたのです。正確に覚えてはいませんが、こんな内容でした。
「…岩隈はああいうところが…。…ピンチをむかえたときに、プロの選手として、慎重さと闘争心、どっちを優先すべきですか?………闘争心でしょう!?」
このときはまだ、<エースの品格>なんて話題はなかったのですけれど、このボヤキ、スポーツする身には、めちゃめちゃ胸に刺さる言葉ではありますまいか。
岩隈は<弱気>だった、逃げたと言ったいるのではありません。<土壇場の瀬戸際で考えすぎたってしょうがない>ってことです。<最後は気合だろっ!>てことです。
<考える>ということを常に選手に説いてき監督の、この言葉にはぞくっときました。
きっと岩隈もぞくっときたんじゃないかと思うのです。もちろん毎度ながらの憶測ですが。
だって、その後の岩隈ときたら、ちょっとぐらい打たれても、ほんとに強気のピッチング。彼が投げれば打線も奮い立って援護するから連戦連勝。防御率1位と最多勝利をダルビッシュと競い合い、ともすれば連敗グセの出そうなチームをぐいぐい引っ張る、エースらしい活躍ぶりでした。
でも…。
岩隈ウォッチャーは、勝ち続ける彼の姿にも、小さな不安を感じ続けていました。
「岩隈復活!…か?」と、どうしても最後に、<?>をつけてしまうのです。ウォッチャーは心配でしょうがなかったんです。
<続く>