8月4日(月)850字の巻

某新聞からリチャード・パワーズの上下巻大作『われらが歌う時』(新潮社)の書評を依頼されました。それは大変ありがたいんです。わたしみたいな批評家でも何でもない、どちらかといえば愚鈍な脳味噌の持ち主にパワーズを任せてくださる気持ちは、本当にありがたいんです。でも、その字数はといえば850字です。
850字。
新聞、雑誌の書評ではだいたいいつもこのくらいの字数が指定されます。対象とされる作品が『食堂かたつむり』だろうが、『われらが歌う時』であろうが、おんなじ850字。足が遅い子と速い子が手をつないで同時にゴールのテープを切る徒競走みたいな悪しき平等主義というか、対象書籍のことなんてなぁーんも考えてない事なかれ主義。レイアウト変更が面倒臭い主義。まともな書評家を育てようなんて気概はまったくなく、どこかで勝手に育ってきた書き手をその場その場で利用するだけの楽したい主義。
言い過ぎましたね。ごめんなさい。
この問題に関しては光文社のPR誌「本が好き!」で連載してる「ガター&スタンプ屋ですが、それがなにか?」にちゃんと書こうと思います。
で、某新聞へのパワーズ評に関しては、他の短い書評でいつもやっているように倍以上書いて、そこから泣きながら削ることになりましょう。それがわたしの仕事です。
追記
というような思いを担当の若い記者の方にぶつけてみたところ、大変丁寧かつ真摯な返事をいただくことができました。もちろん、その方に新聞社の書評欄の現状を変えることなどできるはずもないのですが、わたしが発した「そんなことオレに言われたって困るよ」的な駄々こねに対して、自分の考えを冷静に返してくれるというだけでもありがたいことですし、そういう対話の繰り返しこそが大事だと思うので、わたしは今後も若い人たちに物言いをつけ続けていく所存です。
嫌われちゃうかなー。