ぐっとくる助詞

ぐっとくる題名 (中公新書ラクレ)

ぐっとくる題名 (中公新書ラクレ)

北村浩子さま
 汗と一緒に乏しい脳みそが流出しているみたいで、思考能力が著しく低下しています。が、前回のクイズの回答から。
 (2)だと思いました。他のものじゃなくて、シュークリームが!食べたい。というオンリーワンな感じがします(笑)。
 助詞って、すごく短いのに深いですよね。“シュークリームが食べたい”と“シュークリームは食べたい”“シュークリームも食べたい”では意味が異なる。“が”でも“は”でも間違ってないときでも、使い分けることでニュアンスが変わる。
 そういえば、いろんな作品のタイトルを分析したコラム集『ぐっとくる題名』は、助詞の話から始まっていました。

 子供に名前がつくように、あらゆる本にも題名がある。本だけではない。映画も漫画も音楽もこの世に生まれた表現行為にはほぼすべて「題名」がつく。(中略)
 人の名前にはなくて題名にあるものとして、まずは「助詞」について語っていきたい。

 本棚を見てみると、書名に使われている助詞のなかで圧倒的に多いのは“の”。『ぐっとくる題名』では「ゲゲゲの鬼太郎」「無能の人」が例としてあげられています。
 そして“が”のつくタイトルで紹介されているのは「僕が泣く」です。ビートルズの曲名で、原題は「I'll cry Instead」。「僕は泣く」でもよさそうなのに、なぜ“が”なのか。たった一文字からこれだけ想像を広げられるんだなと驚きました。歌詞を見て、ある言葉が省略されていることを発見するところがすごい。
 私がぐっときた題名の助詞は何かなあとふたたび本棚を見て、目についたのが『居場所もなかった (講談社文庫)』。部屋探しをめぐる小説です。
 語り手は小説家だが何年も本が出ず、親戚には〈才能がない、子供を産まない、作品が暗い〉といわれ、母にはそんな親戚の養子になることを望まれている。〈何も持たぬ私〉は、住み慣れた部屋も引っ越さなくてはならなくなり、ようやく見つけた新居では酷い騒音に悩まされる……という内容を読んでみると、“居場所は”でも“居場所が”でもなく、“居場所も”しかないなと。
 助詞は面白い。北村さんの解説が楽しみです。では先生、次の授業をよろしくお願いします!
石井千湖