『問いつめられたパパとママの本』

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町でよく見かける、子どもの「なんでなんで?」攻撃。あれ、たいへんそうだなあ〜といつも親御さんに同情してます。「なんで今電車止まったの?」とかなら理由が説明できたりしますが、「なんで新宿の次は代々木なの?」とか「知らねーよ! JRに訊け!」って言い返したくなるような、むちゃくちゃなフリしてきますよね、子どもって。横で聞いてる分にはおもしろいんだけど、数年後にあれが我が身に降りかかると思うと、なかなかしんどそうだ。

まあ、そういう“ムチャブリ”質問はともかく、「ローソクの火は吹くと消えるのに、炭の火はどうして熾(おこ)るの?」とか「北極へ行くと東西南北はどうなるの?」など、科学的に説明がつきそうなんだけど、よく知らない……という質問をされたときには困りますね。親の威厳なんてないも同然かもしれませんが、やっぱり答えられないと恥ずかしいし、純粋に「はて、なんでだろう?」と思いませんか?

本書はタイトルの通り、子どもに問い詰められてしまった親のためのいわばアンチョコ。伊丹十三がお父さんお母さんに成り代わって、世の中のフシギについて、とてもわかりやすく説明しています。伊丹十三って何でも知ってるんだな〜と感心して読んでたら、ちゃんと大学教授たちがブレーンとしてついてたんでした。納得。

しかし、単なる“わかりやすい説明”なら類書はゴマンとありますが、名エッセイストの誉れ高い著者ならではの文章はやはり読み応えがある。「空はなぜ青いの?」という章では、七色の光が反射ないし吸収されたりすることで色があるように見えるという説明をした後、〈われわれがなにげなく眺めやる世の中にありとある物という物が、ひそかにある色をはねかえしたり、ある色を吸い込んだりしていることを思うと、なんだかあたり一面にわかに色めきたつような、そらおそろしい気がするではありませんか。〉と一言。理科の教科書では味わえない妙味です。

はてさて、いちばんやっかいかつ重要であろう、子どもからの質問「赤ちゃんはどこからくるの?」。この質問についてもいろいろと著者は考察しています。しかも雑誌連載中は著者には子どもがいませんでしたが、「あとがき」を書いた時点では2児の父。その間に“難問”についての回答も変化したようです。著者の考えたベストアンサーは是非本書で確かめてみてください。