「ファウンテン 永遠につづく愛」(2006/米)

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久しぶりに申し分の無いスットコを観た気がする。

<ものがたり>…って書こうにも、どうにも秩序だったあらすじが書けそうも無い感じ。しいて言えば、”不治の病にかかった愛する妻のために治療薬を開発しようと命がけで頑張る夫の話”とでもすればいいんだろうか。主人公夫婦(ヒュー・ジャックマンレイチェル・ワイズ)は現代に生きてる設定で、妻が病床で書き綴ったお話の登場人物を、件の2人が演じるというもの。新薬開発につながるかもしれないある植物をグアテマラで採集したせいなのかマヤにこだわる2人なんだけど、それなのになぜかお話はスペインで始まる。どMの神父(?)が自らを鞭打ち。そしてむごたらしい傷口を意味も無くアップ。神父一派に王位をのっとられそうな女王(ワイズ)は忠実な騎士(ジャックマン)に、「国を守るには不老不死の植物が絶対必要なので取って来い。そしたら結婚してやる」と濃い化粧で高飛車な態度。<これ普通拒めないじゃん(笑)

それと並行して、どうしたわけか唐突につるピカハゲ丸くんのジャックマン登場。しかも作務衣。この、「作務衣着用で星空をバックに太極拳をするヒュー・ジャックマンが出た時に、この映画のダメダメ感はもう保証されたようなもんだったけど、それだけでは終わらなかったのである…。

医師である現代ジャックマンは、仕事にかまけて妻を顧みず(この研究室がまたヤな感じに照明が暗くてヘンにオシャレというか現実味にかける)。騎士のジャックマンは女王のいいなりで、部下の命も気にしないただのトンマ。不老不死の薬の秘密は棚ボタのように明らかになって、最後は異端の戦士(これがまたどうしても『アポカリプト』のパクリとしか見えないいでたちのディープ南米系)と一騎打ち…なんだけど、あれ? 敵って神父一派じゃなかったっけ?つーかここどこなんだ一体(笑)。  

つるピカジャックマンが腕に施していた刺青を、ある理由から現代ジャックマンも自力でやり始めるとか、おそらく監督のこだわりであろう、3種類の役柄で角度から表情から全く同じカット。だから何なんだ。全編こんな感じのイメージショットばっかしで眠気倍増。起きているのが辛い。

一番の問題はハゲ丸くんバージョンで、この人は不老不死の薬になる古木と生活を共にしてるらしいんだけど、多分騎士→医者→ハゲの輪廻転生なんだろうなあ、と親切にも考えてあげたところでやっぱりどうでもよさ最高潮。しかもこの木、なんか表面に産毛っぽいのが生えてて、それに語りかけながら樹皮を削っていとおしそうに口に含むジャックマンを見てると、不老長寿の薬じゃなくて発毛剤を作ってるようにしか見えないのは私だけなのか。そしてここらへんで壮絶に問題なシーンが。蓮華坐を組んだジャックマンIN作務衣が、ばっびゅーんと宇宙に飛び出す!!! 

そこらへんで開いた口が塞がらないまま観続けると、お話はクライマックスへ。不必要に切り株を見せつつ死体の山を築きあげた騎士ジャックマン、問題の偽アポカリプト戦士と一騎打ちであわや!というところでこれまた想像を絶する天の助けが!!!!!
(ここは最も笑いどころなので観たい方のために伏せておきます。<いるのか?)
そんなわけで首尾よく「生命の木」に辿り着いた騎士。樹液が地に落ちるとそこには一瞬にして草花が!(この草花がこれまた内職で作ったみたいなちゃちい造花なんでびっくり) ケバい女王に捧げる前にまずは自分の傷に一塗り。するとどうでしょう!いきなりここからはモンスターパニックホラー系の映画に早変わり!!!!!(笑)

あっけにとられてエピローグみたいなとってつけたシーンまでなんとか辿り着いたらいきなり終了。
エンドマークが出た途端に、映画の8割ぐらいは本能で忘れようとしたらしいので、この内容は順番がメチャクチャだと思います。でもこの体感時間3時間半ぐらいのスットコ作品をもう一度確認するのだけは勘弁してください。m(__)m

しかしこれを書き終わった時、ベネチア映画祭でこの作品の監督ダーレン・アロノフスキーの新作がグランプリを獲ったことが発覚。しかも主役はミッキー・ローク。剃髪までしたジャックマンの無念さはいかばかりかと。