パ・リーグクライマックスシリーズ決戦のメンバー表 −健気な自前について考える−

ウチスタ(部屋観戦でドキドキする)

突然ですが、今月6日から『FOOD ACTION NIPPON』が始まったのをご存知でしょうか。直訳だと「食い物、行動、日本」です。これだと何だかさっぱりわかりませんが、言いだしっぺは農水省
「日本の食糧自給率を上げよう!!」っつう、<国民運動>だそうであります。日曜まで丸の内でイベントも開催していたらしい。→http://www.syokuryo.jp/index.html

何でこんな話で始まったのかと申しますと、「自給率の高さは野球でも重大問題である!」からです。

パのクライマックスシリーズでライオンズとファイターズのスタメンを見たとき、思ったわけです、あらためて。
パ・リーグってホントに『選手自給率』高いよなあ…」
<CS第5戦メンバー表>→http://baseball.yahoo.co.jp/npb/scores/20081022/stamen_2008102201.html

どちらのチームも、コツコツコツコツ育てた選手ばかり。よそから来た選手だって、引く手あまただったような選手はほとんどいません。
なんたって、両チームとも、そのシブチンぶりたるやファンの間にまでつとに知れ渡っているケチケチ球団であります。年俸が安い選手は大事にするけど、高い選手は額が一線越えたら、生え抜きだろうと主力だろうとあっさり放出。
でも、予算の収支を考えれば、そのドライさもちょっとは理解できるのです。シーズンオフともなれば、あの選手を出していくら浮いたから、こちらの選手にいくら回せるんじゃなかろうか…*1と、ファンまでが家計簿と首っぴきの主婦状態。FAやトレード話に喉から手が出るほど欲しいタイプの選手が挙がっても、値が高ければ見向きもしません。
その代わり、ドラフトで獲得してチームに必要な才能を持つ選手は、なんとしても使える選手に仕上げる。
元々選手を育て上げる力に定評があり、自前の選手で20年もAクラスをキープしてきたライオンズ。去年のBクラス転落から1年で立ち直って見せました。それも、やっぱり自前のハツラツとした選手たちの力で。
昔は、ビンボーが弱さの言い訳のようだったファイターズも、すっかり育成のコツを体得したようで、非力な選手の長所をのばしては適材適所に使い分けることで、しぶとく勝ち抜くチームに変身してきました。
CSのメンバー表には、自前選手で勝てるチームを作ろうとする、健気な努力がにじみ出ていました。

この2チームに限らず、パのチームは大体、ビンボーなので選手自給率が高い。唯一お金持ちで豊富な資金を補強に回せているホークスでも、ドラフトでは地元九州の選手を獲得して育てることで、地域に愛着を持たれるチームにしようとしています。これまた農水省の食料施策でいうなら、『地産地消』ってところでしょうか。http://www.maff.go.jp/chisanchisyo/jissen_plan.html
選手自給率アップに力を注ぐのは、資金不足だからですが、理由はどうあれ正しい道です。だって、それがこれから日本のプロ野球が生き残る道だからです。

今や、セ・リーグやメジャーにとっての草刈場となった感のあるパ・リーグ。毎年続く主力選手の流出はじわじわとボディーブローのように効いてきていて、今年あたりは本当に戦力ダウンのキビしさをひしひしと感じます。メジャーが日本人選手を使うオイしさに気づき始めたようですから*2、このキビしさはやがて間違いなく、パだけではなく球界全体に降りかかってきます。
優秀な選手の流出がこれからも続くでしょう。1チームに何人かという主力選手を育てる時間は、流出に追いつかなくなってしまうかもしれません。とにかく、各チームが他所から集めることは二の次で、自前選手を育てることに尽力しないと、どんどん層が薄くなってしまいます。

育てるより買った方が早くて確実、と堂々と口にしちゃう、そんなチームの皆さんは、ぜひ農水省のホームページにGO!。
食料だって10年前には「金で買えるんだから、外国から買えばいい」という考えが普通で、どんどん自給率が下がったその結果、どうなったかと言えば、いつの間にかとんでもない代物に取り囲まれちゃってたわけです。
日本プロ野球も、選手の国外流出が続いて、数少ない優秀選手は資金のあるチームが囲い込み、気づけば全体のレベルは激落ち、ってなことも十分ありうる。

…ま、ここで力んで話しても、どうなるもんでもないんですけど…。

そうなった日には、こっそりと、『PLAYER ACTION NIPPON!』なんて、一人つぶやいてみましょうかねえ…。

*1:かつて、ファイターズが珍しく破格の年俸を払って獲得した新庄選手が、テレビで引退の動機をインタビューされたとき、開口一番「…まず、ボクの給料が高すぎる…」って言っておりました。彼はとにかく、北海道に移ったばかりで人気が無く、閑古鳥の鳴く札幌ドームに少しでも観客が増えるように、球団にお金が入るようにと頑張ってくれたんですが…。一選手にそこまで気を遣っていただけちゃうくらいの台所事情だったわけです。

*2:野球をよく知っているし、我を張らずにチームの為に働くし、使い易いことこの上ない。