ソフィー・マルソーの 過去から来た女(2007/仏)

ソフィー・マルソーの過去から来た女 [DVD]

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<ものがたり>
刑事としての能力はあるが精神的に不安定なジャック。ある日、自分の車にミステリアスな美女が乗り込んできた。36年前に謎の死を遂げていた女優ビクトリアに瓜二つの彼女は、不可解な言葉を残し去る。高級ホテルのオーナーの失踪事件を捜査していくと、不思議なことに彼女の影が見え隠れしてきた。謎の美女の正体は? ビクトリアは生きていたのか? そして失踪との関連は?

ソフィー・マルソー監督・主演・脚本の、2008年度フランス映画祭オープニング作品(上映時のタイトルは『ドーヴィルに消えた女』)。エキセントリックな刑事役にはクリストフ・ランベール。

自らが監督のみならず脚本にも手を出したソフィー・マルソーは、さすがに自分で仕切れたせいかいつものムダ脱ぎシーンは無し。しかし製作はやらずに出演だけで脱いでた方がこの作品まだマシになったかも…と観た人の80%以上は思ったに違いない。

なんだかいろいろあって(この”いろいろ”というのが劇中だけではさっぱりわからない)、神経科に通ってるランベールには、かつて色男俳優だった片鱗は完璧残っておらず。ていうかこの髪型は何なんだ。ドリフのコントで火事にあったオヤヂか。だらしない服装もほとんどとっかえてないんだけど、何せ脚本が曖昧すぎて時間の経過が全くわからないので、何日着たきりなのかさえも不明で助かっている(?)。

他にもサスペンス映画だから!とやたら謎めいたシーンにこだわったのか、登場人物が意味不明な行動ばかりとってたり。行方不明のオーナーの息子が義母にすがりついたシーンとか、重要なのかと思ったら関係無いし。しかし一番なんだかわかんなかったのは、同僚とのカーチェイス。通院をサボって勝手に捜査してるランベールを止めないと!…というだけで目抜き通りを逆送するか???映画じゃなかったら玉突き事故で大量死。警察内部のことなのに。それにしてもこのシーンはほんと唐突でしかもそれまでの雰囲気と合わずものすごい違和感。「あーなんとなくメリハリ無いわねえ。とりあえずカーアクション入れてみよっか〜」みたいなやりとりがされて急遽足されたとしか思えず。というのも、追いかける方の車に乗っている女同僚がメタボ体型でいつも何か食ってるという設定で、急スピンをかけた途端、喰らってた食べ物を社内にぶちまけ!という、あまりに当然で可笑しくもなんとも無いシーンもあり。追いついて並走する窓越しに停まるように叫んでも、ランベールはハードロックがんがんで涼しい顔。はたから見たら族同士の挨拶にしか見えないこと間違いなし。

ショッピングモールに追い詰めた2人(もうここらへんで脚本さえもが本来の謎とか犯人とかを忘れかけてる感じ)から逃げるべく、洋服屋の試着室に逃げ込むランベール。隠れるだけだから試着なんかしなくていいのに、スーツを上下着用。しかも服の上から。こりゃ変装で眼を欺くためか?と思いきやあっさり見つかっちゃってそのまま逃走。これで単なる万引き現行犯。しかも同僚から逃げるため。次のシーンでは上司からお目玉。おまけに高いスーツ代支払った…って言われても全然笑えない。

そんな感じでおそらく”美しい魔性の女ソフィー”を演出することに全力を投入した本作品は、さらにどうでもいいクライマックスへ。先の展開のわかりやすさたるや2時間サスペンス以下。いっそのこと崖でも行かないと。

と長々と書いてきたものの、この映画の最も酷くて呆れたことといえば…

集音マイクが映りまくりだ!!!!!(驚)

第1回目は「多分これサイズ調整で上下切る予定で入っちゃったんだろうなあ」と好意的に考えてあげたものの、なんとそれが全編通して20カット以上はあったですよ!!!これ、商業映画として上映するってどうなの??音声さんと編集さんはそこんとこどう考えてるわけですか!!!試写とか無かったのか??<なわきゃねーし
それ以外にもカメラの左上にレンズカバーかなんかの影が映ってるし!ちなみに画面上部に出まくりのガンマイクの動きを追ってみると、役者の喋る順番がわかります…ってちっとも嬉しくねーよ!

そんなスットコにもほどがあるマイク映りこみシーンの白眉は、アップで映ったランベールの頭にマイクが「ゴン!」て当る場面。それでも演技を続けるランベールを尊敬します。<大ウソ

尚、DVD収録のアルバトロス製予告編は凄い!重要シーン(とはいえ大したこと無い)ほぼ全部見せちゃってるだけじゃなく、ラストシーン(「両親に捧ぐ」の献辞が出てた。こんなシロモノを捧げられた両親はいい迷惑だと思う…)まで大胆に使用!! そして最後に「酷すぎる愛」てなキャッチコピーが。酷すぎるのは愛じゃなくてこの映画だよ!と口に出して呪ったのは私だけではあるまい。