5月17日(日)岸本清子はすごいの巻


と、金沢21世紀美術館というところでこんな面白い体験もしたわけですが、この日「愛についての100の物語」という開館5周年記念展が開催されていたわけで、その中でわたしを魅了してやまなかったのが岸本清子(きしもと・さやこ 1939〜1988)だったんであります。
怪獣の絵がものすごくかっこよかったんですが、それ以上に素晴らしかったのが展示区域の壁に記されてあった、1983年に東郷健率いる雑民党から参院選に出馬した時の選挙演説で(絶句)。
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4660870?oldplayer=1

わたしはアレだ。こういう人が好きなんだ。頭のいい人の論理的な物言いに心は動かないけれど、こういう人のあからさまにおかしくて可笑しい言動に、激しく心が動くんだ。

機械的に反復される慣習の世界に囲い込まれないものがある。それが何かの拍子にひょいととびだしてきて、まるで自明のもののようにそこらに転がっている。これほど不安な、あるいはむしろ不穏といってもいい光景もないだろう。たとえ当の突飛なものがたった一つのオブジェにすぎなくても、その背後には、このオブジェを一部分に組み込んだもう一つの世界システムがひろがっているかもしれない。とすれば当のオブジェを承認した瞬間に、そのかくされていた世界が起き上がってきて、これまで自明を思われていた慣習の世界を履滅的に呑み込み裏返してしまうのではあるまいか。(略)同時に、一見不変不動に見えた慣習の世界から逸脱して、そこから慣習世界を見返すとなにがしかの滑稽感が湧いてくる。これまでこれこそが現実とばかり思っていた世界のほうが、逆に慣習の先入見にがんじがらめにされた〈幻想〉だったのだ」
(ロミ『突飛なるものの歴史』中の、種村季弘の序文より)

頭のいい人、教養豊かな人を、わたしはとても尊敬している。
でも、わたしが心底感銘を受けるのは岸本清子のような人なのである。
なんで?