旭山動物園物語 ペンギンが空を飛ぶ(’09/日)

廃園案が進んでいた弱小動物園が、いまや日本で一番の入場者数を誇る人気施設へと、奇跡の復活を遂げた実話を元に作った話だそうなんで、普通ならあまりツッコミとか出来そうも無いんだけど…

実話ベースにしても相当脚色されてるんだと思う、いや思いたい

しょっぱなから度肝。民家の廊下を箒で掃くシーン。ゴミと一緒にカブトムシやらクワガタの死骸が。なんか生きてるのも混じってたので、ぽいと掴んで部屋に放り込むと、その部屋はなんと昆虫だらけ。床なんかカブトムシ系でぎっしり埋まって真っ黒。<ここ、虫苦手な人じゃなくてもかなり怖い  スクリーン一杯にカマキリが映ったかと思うと、蝶も飛び交う部屋の真ん中に男子小学生が恍惚の状態。カメラはそのガキのアップから片目だけのアップへ。その瞳の中には昆虫が…ってこれ、『呪怨』ですか??? こえーよー!(泣) これってきっと園長(西田敏行)の子供時代なのね、そんなに生き物が好きなのを見せたかったのか、と思いきや、これは新入りの自閉症気味の若者だった。でもオープニングを観る限りでは、この猟奇的な若者が何か禍々しい事をしでかすんではないかと大変不安になる。

しかししでかしたのはロートル軍団だったのである。どこまでが事実かわかんないけど、この動物園、飼育係が全員不安なほど高齢(監督の実兄の長門裕之岸部一徳柄本明、他)。じゃあきっと高齢者で世話も大変で、と苦労話の一つも出るかというとそういうわけでもなく、一体全体この人たちの年齢設定はいくつなんだ??<とにかく不安になるほど長門のテンションが高い そんな高齢者軍団の一人、岸部はゴリラの繁殖をまかされているものの上手く2匹がつがってくれなくて、長門「じゃあお前が(雌ゴリラの)相手になればいいだろう」などと身も蓋も無い言われよう。怒った岸部はやけになって雌ゴリラから離れたところ、さびしくなった雌ゴリラは死亡

そんな動物園に、きったない字のプラカードを持った動物飼育団体が「野生動物は野性に返せ」と抗議にやってくる。ちょうどその時「息子が買ってきたミドリガメサルモネラ菌を持っていて怖いから園でひきとってくれ」とモンスターマザーもやってくる。それを見た団体のねーちゃん(前田愛)は「カメは川に放せー!」と騒ぎ出すのだが、当然のごとく園長に「外来種を安易に川に放すと生態系が崩れてとんでもないことになる」と真っ当至極な説明をされ、驚きと共に感じ入るねーちゃん…なのだが、実はこの女は後に獣医学部の学生だということが判明。それで外来種のことも知らないって何なんだ!!!

その後ねーちゃんは真冬の園内ツアーに来てこれまた驚きの連続。<初めて動物園に来たかのようなはしゃぎよう。何度も言うけど獣医学部なんですけど  いつのまにか飼育係として働いたねーちゃんはこれまた実は市長(廃園案推進者)の姪だった。この、叔父とのシーンが凄い。どっかのテラスで優雅にケーキセット…はともかく、なぜかケーキが沢山載ったトレーが大写し(しかもおそらくクレーン撮影)。「じゃあこれとこれ」と2つ選ぶねーちゃん。えーと、お金持ちだから2つ食べられるとかそういうことですか!? 

出番は常にハイテンション!というか何か間違ったものを吸い込んだのでは…と不安になるほどのオーバーアクトの長門は、担当のチンパンジーに子供が産まれてテンションウルトラマックス!!マンモスうれP!!!な状態で、叫びながら園内を走り回る75歳!! その喜びの雄たけびに動物たちも賛同の鳴き声!という意味なんだろうけど、ゾウは「うるせーんだよてめーはよ!」って感じで怒ってるように見えるんですが!

もしかして↑は伏線だったのか…。感極まって長戸がゾウ舎に飛び込んだその時!「ぱおーーーー!」
とゾウの雄たけびが!なんと長門は嬉しさの余りゾウに抱きついて、驚いたゾウは長門を踏み潰した!!!
<らしい。さすがにそこまでグレートハンティングなシーンは無理かと 

呼び物の動物が2匹もいなくなり、存続も風前の灯となった動物園。トラを見に孫を連れてきていた麿赤兒が、キタキツネを介して伝染するエキノコックスの蔓延を防ぐため塀を作ってくれたり(社長なのにわかりやすいニッカーボッカー姿で現れる麿)、園長得意の演説により、3千人もの市民が廃園中止を訴えてくれたが、選挙で新市長(萬田久子)に変わった途端、廃園案急浮上。

園長と若者は全国の動物園をまわり、生態展示に変える一大決心をする。それを決めたのが、若者が「こんな展示にしよう」と妄想中、
ペンギンがびょーーーーーーーーーーーーーんと空に向かって飛ぶ!!!!! 

全員(監督含む)、何か吸ってたんですか?? ケン・ラッセルだってこんなシーンやらないだろう!!!と思うほどの荒業に仰天。その後、月だと思ったら地球になって、そこからまたもやペンギンが今度は宇宙空間に向かって飛び出して行った時はもう(以下略)。
途中、西田敏行の歌う挿入歌のプロモーションビデオ(としか思えない)が流れ、これまた目が点。

そしてクライマックス。存続を賭けたプレゼン。全国の水族館を撮って来たビデオと、「ペンギンが空を飛ぶんですよ!」という○○患者の戯言で、4億5千万出す新市長!!! 

かくして日本一の入園者数をクリアした動物園。園長の退任で終わり、エンドタイトルは実際の動物園の現在の様子。まあ妥当な映像だなあ…と思っていたら、ラストのラスト、オオカミの檻(?)を眺めるおじさん一行を良く見ると…監督のマキノ雅彦だった!!!とそこに監督名が被って完。主役はやっぱり監督だったのか!!!!!

てなわけで、「生態展示を成功させたアイディアはどうやって出たのか」とか「日本一の動物園になるまでの過程は」とかの苦労&成功話かと思って観てたらあまりにも違いすぎるんでびっくりした。苦労話って、ほとんど「いかに予算を通過させるか」っていう、会議のシーンばっかり。結局はお金って意味なのか?? これ、子供に見せてどうするんだろう…。ともかく最初のシーンで泣き出してトラウマにならないことを祈るばかりである。