グリッター きらめきの向こうに('01/米)

<ものがたり>
ジャズシンガーの黒人の母と、認知もしない白人の父との間に生まれたビリー(マライア・キャリー)は、幼い頃から母のステージに立ち、その歌声に喝采を受けるほどシンガーとしての才能に恵まれていた。ある晩、酔った母の不注意から家が全焼、母はビリーを施設に預け、そのまま行方不明となった。時は経ち、ディスコ全盛期の1983年。成長したビリーは、同じ施設の仲間2人とダンサーとして生計を立てていた。そんなある日、売れっ子プロデューサーのティミー(テレンス・ハワード)の目に留まり、新進ディスコ歌手のバックダンサーの仕事をオファーされる。実はその歌手があまりに歌が下手なため、吹き替えで歌わせるのが目的だったのだが…。

マライアによるマライアのための半自伝的(?)なアイドルサクセスストーリー。しかし成功物語というにはあまりにも…ということで以下参照。

猫を抱いて施設に連れて来られた小学生のビリーに近寄る女子2人。早速いじめ?と思うと、「仲良くしようね〜」と瞬時に友達に。それはいいとして、その友人コンビは10数年後?(なにせ主人公がいくつの設定か不明)にも変わらず大親友で、共同生活をしユニットまで組んでいた。

ディスコで初お披露目の曲で、オンチだった歌手の声が全く違うため吹き替えに気づいた売れっ子カリスマDJダイス(マックス・ビースレイ)は、それがバックダンサーの絶世の美女(マライア)だと見抜き、ティミーに「10万ドル払うからあの3人を渡せ」と、勝手に人身売買。しかしこのシーン、あまりに2人が安っぽいのでヤクの売人VSポン引きの取引にしか見えない。

「君の夢は何だ?俺と組めばマジソン・スクエア・ガーデンでのコンサートも夢じゃない!」と、なぜかロバート・パーマーの"ターン・ユー・オン"のディスコバージョン(?)で売り出しにかかるダイス。ダンス部門で大ヒット!ってほんとですか?w インディレーベルの誘いを断り続け、とうとう念願かなって大レーベルからお声が!「明日オフィスに来てくれ」と言われて出向く2人はどうみてもピンプとフッカー。行った途端にもうレコーディングとビデオ撮りと専属広報まで決まってて、ここまでこぎつけるのが全く大変そうじゃない

そのせいか時間の経過がさっぱりわかんないまま、ここで2人はお祝いも兼ねた初デート。友人たちに「最初からベッドインはダメよ!」と送り出されたのもどこへやら。80年代風ロフトの彼の家であっさり陥落。一昔前の身の上相談でよく使用された曇りガラス越しに服を脱いでたけど、なんか白いパンツがやたらでかかった。

恋人となった2人の初仕事はPV撮り。バックのダンスがイメージに合わない!と監督のダメ出しで、怒って出て行く親友2人。<それでも友情は破綻しない  お次はエロいというより誰も頼んでないほど露出過多の衣装で踊るビリーにダイスぶちギレ。俺の女にそんな格好させるな!と監督を怒らせて出て行くが、これまたレコード会社からおとがめも受けず、何も無かったようにスターへの道まっしぐら。

ビッグになっていくビリーに対し、ルックス込みでヒモ状態が加速していくダイス。音楽賞授賞式のリハーサルでビリーは大ファンの有名歌手ラファエルから「今度僕とデュエットしようよ」とアプローチされ、打ち上げで酔ったダイスは大物ぶってビリーを連れ出し、リムジンで親友達をこきおろし(この応酬が小学生並みのものすごい低レベル)、さすがに怒った2人は車を降りる。「なんか違うんだけど」とやっと考え始めるビリー(多分)。

ある日帰宅すると家の中にティミーが!「どうやって入ったの?」と当然聞かれてもそれっきり。ほんとにどうやって入ったんだよお前は(笑)。「お前のカレシが10万ドル払わねえんだよ!」と言われて事情を知ったビリー。逆ギレしたダイスはティミーを待ち伏せしボコボコにしたところ、現行犯で逮捕!当日のTV出演も断り身元引受人になったビリーは、とうとうダイスに三行半を叩き付け、猫(子供時代から初めて登場)を抱いて親友2人のところへ。仕事も干されて連絡も途切れてたのに、「あんな男と別れて良かったわよ!」と迎え入れる親切過ぎる2人。しかしダイスは「お前んとこの歌手が口パクだったのバラす!」と言えば済むのでは???

「別れるのが辛い」と言いながらも、ウザいヒモもいなくなったところでラファエルとの競作も進み、ひとり順風満帆なビリー。とうとう念願のMSG(注:マイケル・シェンカー・グループではない)でコンサートの日、ダイスの留守宅に入り込み、楽譜にべっちゃりとキスマークを残す…って、自分から別れたにしては随分都合がいいような気がするが。愛の証を見つけて浮かれたダイスが会場に向かおうとしたところ、目の前に拳銃を構えたティミーが!

会場に着いたビリーを待っていたのはダイスの訃報。関係者控え室で親友2人(いつからユニットが再雇用されたのか不明)に励まされ、大観衆に「好きな人は手放しちゃいけないのよ!」と訴え、ダイスに捧げる愛の歌を歌い上げるビリー。ここで終わるかと思ったら、生前ダイスは行方不明の母の居所を突き止めていた。リムジンに乗り込み、コンサートの衣装のまま母に再会するビリー。幸せを噛みしめて天を仰ぐ2人。完。

実はまわりの人間の苦労話だった!という意外な展開。主人公はというと、とりたてて苦労もせずにカリスマDJに見初められ、メジャーレーベルデビューしたシングルが10週連続1位。友人にも慕われ続け、その美貌と巨乳で有名ミュージシャンにもモテモテ。邪魔なヒモ彼氏も自滅。という一つのダメージも無いサクセス人生に眠気総結集。

このあとマライアは心機一転、『プレシャス』(’09/米)で脅威のスッピン出演を果たすのだった!いやしかしあれってもしかしたら高度なナチュラルメイクなのかも。