『ウルトラ I LOVE YOU!』(‘09/米)

<ものがたり>
アラフォー独身実家住まい男っ気皆無の雑学女メアリーの職業はローカル新聞のクロスワードパズル作家。両親がお膳立てしてくれた気乗りのしないブラインドデートで、なんと予想外の超イケメン、スティーヴ(ブラッドリー・クーパー)が来たからさあ大変!瞬時に露出度の高い服に着替えて猛烈アタック。その勢いにびびった彼は緊急の仕事のふりをしてからくも逃走。だがそんなスティーヴの「じゃあまた」の一言を、メアリーは相思相愛の証拠と独り決め。天にも昇る心地で「スティーヴの全て」と題したパズルを投稿し、新聞社もお払い箱に。しかしそんなどん底の状況を“未来のだんな様登場→クビ→自由→結婚”という天恵と思い込んだメアリーは、TV局のニュースカメラマンの彼を追い、全米各地の事件現場に向かうのだった…。

サンドラ・ブロックが同じ年にオスカーとラジー賞を受賞した、悪い方の作品。私の場合、ラジー賞は別の意味にしてもある程度楽しめるんだけど、これは酷かった。
もう最初からイタ過ぎ。ぱっとしない服装に真っ赤なエナメルブーツで、人の迷惑を顧みず、知る限りの雑学を弾丸のようにしゃべりまくるメアリーに対し、普通に接してる両親が凄くいい人達に見える。一目でスティーヴが気に入り、いきなり勝負下着に全とっかえのシーンなんかは、普通ならここで多少なりとも「あ、良かったねー」と思っても良さそうなもんだけど、実家の前に止めた車の中でデートコースを提案する彼にいきなり襲い掛かる(文字通り)メアリーは笑いを通り越して恐怖。最初飛び掛ろうとしてシートベルトに邪魔されるとこなんてほとんどゾンビ。アラフォーの独身女はこんなに餓えてるんですよ〜、てな悪意さえ感じられるんですが。

逃げたスティーヴを追っかけて全米横断ストーキング(自覚無し)の旅に出るメアリー。長距離バスで休むことなく雑学を披露しすぎて追い出されたり、親切にトラックに載せてくれたオッサンをレイプ目当ての変質者扱いしたりと、ラブコメディの主人公にしては笑えないシチュエーションの連続。どう頑張っても暖かい目線で見られない。

遂に最愛の彼氏の元へと辿り着くが、スティーヴの仕事仲間のいたずらにより、更に誤解を増して愛のために暴走するメアリー。そのせいで怪我をしたり始末書ものの失敗をさせられたりと追い詰められたスティーヴはとうとうノイローゼ。気の毒すぎる。

最初の現場で意気投合した仲間たち(意味もわからず誰かの応援でキャンドルサービスをする女と、大学を中退して生のリンゴで作った人形をネットで売る男)と一緒に、彼を追って次々に事件現場を訪れるメアリー。クライマックスは、口が不自由な子供達が遠足中、地下の坑道に落ちる大事故。この描写がまたひどい。遊戯施設に向かって走って行く子供達の足元にいきなり大穴が開いてヒューン、どさっ! 数時間かけてやっと救出が終わり大団円!と思ったその瞬間、スティーヴ目指してとことこ歩いてきたメアリーが穴に!目の前のこんだけデカイ穴になぜ落ちる!!救出部隊にしてみれば明らかに二次災害。しかも人災。むかついた視聴者(私)に驚愕の事実が。なんと穴には助け忘れていた女の子がいた!いくらなんでもひどすぎる設定。

結果、能天気なメディアは「女の子を救いに行った勇敢な女性」としてメアリーを一気に全米の注目の的に!おまけに散々「あと数時間で酸素が欠乏してお先真っ暗です」なんて報道。視聴率稼ぎのために「落ちた最愛の彼女を心配する彼氏」としてカメラの前に立たされたスティーヴは、「彼女は誤解されてるかもしれないが、とても頭が良くて優しい女性です」となぜか突然本心で心配。疲れすぎて思考能力が低下したとしか思えない。一方穴に落ちても雑学を喋り捲り、赤いブーツがいかに好きかを主張するメアリーの本質は全く変わらない…。

その後更に人災は続くものの、当然のことながら無事に救出された一行。ここでスティーヴとくっつくのか?最悪じゃん!と思った瞬間、なんと「人は自分と似たような人と一緒にいるのが一番なのよ!」と悟り、幸せいっぱいで仲間と抱き合うメアリー。「ヘンな人はヘンな人同士仲良くしてなさい」って言いたかったのかこの映画は!? そして追い討ちをかけるように、クレジットが終わってからの追加オチも最悪。ちーん。