『プロジェクト・グリズリー』(96/加) 

プロジェクト・グリズリー [DVD]

プロジェクト・グリズリー [DVD]

「どうしたら死なずにクマに襲われることが出来るか?」という野望を抱いたカナダ人中年オヤヂの報われない愛の軌跡を追ったドキュメンタリー。本人だけはそりゃもう大真面目。

若い時に山でグリズリーに襲われそうになり、もうダメだ!と思った瞬間、クマは笑顔で去って行ったらしい(あくまで本人談)。それ以来、「(ちゃんと)クマに襲われたい!でも死にたくない!でも襲われたい!」という特殊な葛藤を抱き続け、遂に「対クマ専用パワードスーツ」を作成するに至ったという。

そしてこのパワードスーツ、ほとんどアメフトのガードだけの試作品に始まり、映画撮影当時はとうとう第6号目(通称マーク6号)となっている。改良に改良を重ね、チタンに鎖帷子にエアバッグ…と、本人曰く製作総経費150万ドル!!!…って言うんだけど、どう見ても145万ドルぐらいは医療費と保険じゃ? 経営している屑鉄屋の売り上げを注ぎ込み、奥さんと子供は呆れているらしい。<当たり前だろ! 

一番の見所は実験である。
「グリズリーの手を振り下ろす力は○○メートルの高さからXXキロの丸太を落とす力と同じだ!」
「グリズリーが身体でぶち当ってくる力は○○トンはある!」
「グリズリーの鉤爪の威力はXXぐらいだ!」
などなど、グリズリー愛に満ち溢れたオッサンの研究は果てしない。そこでパワードスーツを着用し、実戦に備えて数々の実験を試みる!

・ 高所から丸太を直撃!
・ 爆走するトラックに体当たり!
・ アーチェリー、射撃のプロによる実弾射撃!
・ 火炎放射器による耐火訓練!

<グリズリーは火噴かねーだろ!!!

他にも、「クマと同じ行動を取るのが一番」と夜更けにゴミ捨て場を徘徊したりと、地味な作業もいとわない。だがしかしとうとう本番の対決の時が迫る!山のキャンプ場で人が襲われたのだ!<このニュースを聞いた時のオッサンは大変悔しそうであった  
冬眠に入ったらもう会えない!!ということで急遽対策チームを招集し、雪深い山へ入り込んでいった一行。

そして雪山でも抜かりなく実験は続く。しかし思ったよりも立地条件が悪く、重すぎてぬかるみに足を取られて全く動けなかったり、岩場ではまっすぐ立てずに転んでしまうのだ!それでもオッサンはめげず、冬のカナダの山の中、ランニングとステテコ一丁で得意のカンフーポーズをきめるのであった。

山篭りも数日。待てど暮らせどグリズリーは来ず。私の予想ではこのオッサンの過剰な片思いオーラが発散し、クマまで届いてびびらせたんじゃないかと思う。そりゃ怖かろうとも。

結局今回は見送ることにした。スーツは重いんで運べないため、行きと同じくヘリコプターで移動してもらうので、頂上に置いたまま一同は山を下り始める…、ところが!何の運命のいたずらか、とうとうグリズリーが現れたのである!!!正に千載一遇のチャンス!!!!!

でもスーツは無い

ここまでお膳立てしたにもかかわらず、遠巻きに指をくわえて見てるだけのオッサン。ていうか、又無事なのかアンタは!!!

果たして彼の報われない想いはいつ成就するのであろうか。
<クマのためにも報われることがあってはならないと力強く思う私