『ラスト・ターゲット』(2010/米)
- 出版社/メーカー: 角川書店
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- 作者: マーティンブース,Martin Booth,松本剛史
- 出版社/メーカー: 新潮社
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<ものがたり>
イタリアの小さな村に現れたアメリカ人の男。寡黙で謎めいた彼の正体は、裏社会からの特別注文で暗殺用のライフルを作る職人だった。極力他人との接触を避けていたが、地元の娼館に通い、世話焼きな神父と交流するようになった頃、女性スナイパーから仕事が舞い込む。これを最後の仕事と決めた男だったが・・・。
監督はジョイ・ディヴィジョンの青春映画『コントロール』を撮った、元カメラマンのアントン・コービン、主演のエドワードはジョージ・クルーニー。原作はマーティン・ブース『暗闇の蝶』(新潮文庫)。
大抵の映画は原作を超えられない、とりわけスットコ界においてはもうこれは完全常識だと思っていたら、なんと原作の方がスットコだったという異色作!
というのは、原作ではイギリス人の主人公はかなり(おそらく)年配。その年配の男が、「老いてなお」かっちょいい、モテモテ、金はある、グルメ、おしゃれ、もちろん仕事も超一流・・・という、男はこうありたいねと言わんばかりのLEON御用達オヤジなのである。必然的に蘊蓄の嵐。蝶の絵が専門のイラストレーターというふれこみなので、自分の尿でいかにおびき寄せるかとかやたら細かい。そんなばりばりの”男ハーレクイン”をジョージ・クルーニーがやるというので、ある意味大変期待していたのだが、これがふたを開けたら女ハーレクインになっていた!
冒頭、イタリアに来る前にスウェーデンで殺し屋に狙われるんだけど、こんなシーン入れなきゃ良かったのにねえ・・・。というのは、北欧の冬、雪の積もった屋外に出たクルーニー、鼻とほっぺたが真っ赤なんですけど!『パーフェクト・ストーム』の漁師じゃないんだから!とりあえず銃撃シーンで硬派に決めたけど、あまりにしょぼいツラでこの先どうするんだろうと不安。
あったかいイタリアに来てなんとかいい男オーラを出せたクルーニー。半裸で腕立て伏せに懸垂に風呂上がりシーンと大盤振舞い。しかし原作では「老いてなお」が売りだったのに、クルーニーはああ見えても撮影当時まだ49才ですから!だもんでなじみの娼婦ができて娼館に足しげく通ってもそんなにどうってこたぁないんだけど、なにせ原作では作者の願望なのか、女子大生と3P!しかも老いてなお!という大スペクタクルシーンが売りとなっている。<? しかし映画ではせっかく(?)クルーニーを使っているにもかかわらず、このシーンは無し。全国の既読オヤジの落胆が目に見えるようである(ウソ)。一応それなりのシーンはあるものの、一人だけ(笑)。おまけにこの相手役の娼婦(ビオランテ・プラシド)も女子大生度皆無なんですよねえ。(撮影当時34才だったらしい)やっぱオヤジドリームとしては女子大生は重要なんじゃないの?
地味にリッチな生活を送りつつ、美人過ぎるスナイパーのご注文もこなし、真実の愛も見つけたんでここは引退!と、そうは問屋がおろさないのは当然。謎の殺し屋に狙われるわ、恋人の素性も怪しくなってくるわで、冒頭からずーーーーーーっと眉間に刻み続けた苦悩のしわも、苦みばしったいい男を通り越していい加減飽きてくる。これ、やってるクルーニーも辛かったろうなあ・・・全然笑えないし。
そしてクライマックス。お決まりのその土地ならではの催しに乗じて暗殺者に狙われるクルーニーであったが、ここでいきなり原作とは違う方向に!
えー、それで終わりますか!
まさかの方向転換でハーレクインフィニッシュ!!全女性が泣いた!
かくして男ハーレクインは普通ハーレクイン(もしくは韓流風味)に趣旨替えしてエンドクレジット。まあいいけど。
でもさあ、女子大生3Pはレーティング的にともかくとして、「現役女子大生2人が初老の男をキャットファイトで奪い合い」ってシーンは残しといた方がシニア層の観客が増えたと思う。しかしそれよりなにより私が不満なのは、本で一番笑い転げたあの台詞が無かったことだ!これをクルーニーが言うシーンを本当に観たかったんですけど!!!以下、問題の台詞。
「尾行は男のスポーツだ」
完