☆超番外編☆ 『ブラック・スワン』(‘10/米)

今回のお題は、現在巷で話題沸騰の『ブラック・スワン』です。ちなみにスットコではありません!
…と言い切りたいけどたまに微妙なシーンあり。いろいろな意味で語りたくなる問題作といえましょう。
ちなみに監督は 以前このコーナーでご紹介した『ファウンテン』のダレン・アロノフスキー。

<ものがたり>
NYのバレエ団に所属するニナ(ナタリー・ポートマン)は、やはりバレリーナだった母(バーバラ・ハーシー)と二人暮らし。現在のプリマであるべス(ウィノナ・ライダー)引退の噂がたち、今度の公演「白鳥の湖」ではなんとしてでも主役の座を得たいと、文字通り血の滲むような練習に励んでいたが、選考会で筆頭振付師のトマ(ヴァンサン・カッセル)から、「白鳥だけなら絶対に君を選ぶが、君には黒鳥は無理だ。」と言われ絶望のふちに立たされる。いつもなら泣き寝入りするニナが、捨て身でトマを説得しに行くものの、更に屈辱を味わうこととなる。しかし、発表された主役はなんとニナだった…。

製作途中のティーザーポスターを見た時点で、
「おお!これはトウシューズに画鋲ではないか!!!」
と喜んだのは言うまでもない。

トウシューズに画鋲…ある世代の日本女性にとってはまさしくネコにマタタビ。<例えが限りなく昭和  70年代に入り、少女マンガ大全盛期の中、小学館の月刊学年誌に連載されていた谷ゆきこ先生のバレエ漫画を食い入るように読んでいた女子の数は計り知れない(ちなみに筆者は姉が買っていた学年で連載されていた『まりもの星』を読んでいたと思われる)。おそらく子供の習い事が当たり前になり始めた時代だったのか、クラスに2人か3人ぐらいはお稽古に通っていたお金持ちの子がいたはず。

少し遅れて雑誌「りぼん」で決定的なバレエ漫画、山岸涼子先生の『アラベスク』が始まる。それまでは貧乏で薄幸の主人公が数々の困難を乗り越えながら、東京のバレエ団の花形プリマへ、という話だった(と思う)のが、ここで一気に外国、しかもソ連へと舞台がパワーアップ。レニングラードVSボリショイという、小学生には全くわからないレベルのスケールのでかさにも関わらず、主役争いにおける苦悩、いじめ、葛藤、妬みといった基本要素は、ことバレエ界においては全世界共通だったことが判明。今現在のアラフォー以降還暦未満ぐらいの日本女性にその認識が広まった(多分)。そして後年、ナンシー・ケリガンXトーニャ・ハーディング事件でも同じようなカタルシスを得たであろうことは想像に難くない(笑)。

その後も有吉京子先生や小野弥夢先生などが華麗なるトウシューズに画鋲ワールドを発表。基本的に女子向けのスポーツ漫画もそっち系の筋立てではあるものの、やはりキーワードが美人・お金持ち・ダイエットであるがゆえに、幼い頃から刷り込まれたクラシックバレエへの憧憬は、世界広しといえども上記年齢層の日本人女性がダントツに強いのではないかと思うのである。「トウシューズは自分の足に合う様に伸ばしたり底に傷をつける」とか「黒鳥の32回のグラン・フェッテ」とか「日本女性の脚は曲がっている!」とか、生きて行く上で全く必要の無いことを、最も記憶力がいい時期に覚えて今に至るとか。<それは自分

そして『ブラック・スワン』はというと、正にそのうさんくさい点において文句無しの出来栄えである上に、ガラスの仮面』的側面(亜弓が芸の肥やし、とどうでもいい外人とつきあったり、マヤが大河ドラマ出演の際にライバルに一服もられるあたり)も抜かりなく、なおかつ母親が楳図かずお作品レベルのトラウマキャラであったりと、これは本当に一部の日本女性に向けて作られた実写サスペンス少女漫画−“セルフ画鋲メガマックス版”、じゃないかと思った(笑)。一方、男性側の感想では圧倒的に「ホラー」と受け取られているあたりが非常に興味深いw 

確かに次から次へと繰り出される“あるある的痛さ”のシーンや、いたたまれない程の夢見るピンク部屋は、同監督の『レクイエム・フォー・ドリーム』を凌駕するほどですが、ホラー的シーンの前にはそれっぽい音楽がかかるという安心設計(笑)。普通こういうジャンルの映画だと、実際やってる人が「やってる人にしかわからない自慢」が出来るんだけど、これは「私もそうなのよ」とは絶対言えないw。

詳しくは書けないものの、私はクライマックスで別の展開を想像。もしそっちだったら立派なミステリだったんだけど。<いや、そうじゃなくてもいいんだけどw それから、ニナがトマと会話する時は丁寧語の字幕が良かったなあ。あと出来ればもっとトウシューズに画鋲的展開が欲しかった。特にウィノナ

以上のことをふまえて(?)、現在30代から50代の日本女性はとにかく必見の映画です!!今すぐ劇場にGO!
(現在公開中)