『ブルー・エンカウンター』(2002/香)

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遂にスットコ映画も文学フリマで同人誌デビュー! 5月6日の文学フリマ@流通センター、「書評王の島」ブース(カ ー13、14)で売らせて頂くことになりました。「書評王の島」本をお買い上げのついでによろしくお願いします!

<ものがたり>
サンフランシスコに人知れず存在する国連の秘密機関AAA(地球外生物分析課)の腕利き捜査官ウェズリー(アンディ・ラウ)が向かうのは、なじみの骨董屋。人間の手首の骨の形をした青い水晶を、買いたいと現れた女性ティンガイ(ロザムンド・クヮン)に譲ることに。おりしも事件発生の知らせを受けて現場に向かうと、敵対するFBI特捜部と鉢合わせ。ケイワイ(ロイ・チョン)とソウ(スー・チー)を出し抜いて凶悪宇宙怪物に立ち向かうが、すんでのところで命を救ってくれたのは、巨大なパワーを持った地球外生物のティンガイだった。

香港映画好きな人なら誰でもご存知のバリー・ウォン王晶)といえば、そりゃもうサービス精神旺盛な確信犯的スットコ映画を次々と世に放つ異色プロデューサーであり監督なので、ツッコミは野暮というものですが、中でも製作及び出演(クォク博士)したこのSF大作はぜひ多くの人に知って頂きたい超絶問題作。『ブルー・クリスマス』など思い出したところで何もならなかった…。以下参照。

国連のMIBって何!と、しょっぱなからお茶を吹きそうな珍設定。いかに中華街が大きいとはいえ、アメリカなのに主役・FBIの精鋭2人・怪しい博士・宇宙人(いいのと悪いの)が全員中国人(のルックス)。すごい割合。

冒頭宇宙怪物が出現した現場で、「住宅地だから気をつけろ!」と言ったそばから、メンツを保つためだけに地球人同士で実弾を撃ちあう主人公とソウ。すぐ近くに同僚や民間人がいたような。狂暴化した宇宙人は屋外に逃げる主人公を追い詰めるが…、だから住宅地だって言ってんじゃん! そういえば救ってくれた女性に見覚えが。あれは小学生の頃、学校の前で交通事故にあい、額から青い血を流していた女性にそっくりだった。たまたま教室から出された主人公以外は、その記憶が全く残っていなかった。

FBI本部の特別治療室、浮遊する球体の中にいる瀕死の主人公に、外からティンガイが念を送ると不思議なことにあら回復。スーパーコンピューターと連動して放射能を自ら作り出して治った」らしい。ウェズリーはFBIおかかえ超能力者とパワーを増幅し、脳で交信してティンガイを探し出す。OLに身をやつしていたティンガイは職場で白人おやぢからダイレクトなセクハラ。牛乳をぶっかけて蹴り飛ばした彼女に「Bitch!」と言い放って済む会社…みんな見てますけど。しかもその後、駐車場で反撃に出たおやぢは棒切れで背後から一撃。危機一髪なティンガイを助けたのはウェズリーに化けたクォク博士(バリー・ウォン)だったという、全編を貫いた白人野郎全員悪人説。一方、アメリカの砂漠にはティンガイを追って悪い宇宙人ワーロック星人カップルが地球に飛来(筋肉標本からDr. Manhattanとミスティーク風に変身)。

実はFBIのウィルソン(白人男)もティンガイを軍事利用し一儲けを企んでいたので白人悪人説ダメ押し。反対したウェズリーも監禁され、壁を通してテレパシーで愛を育む2人。ワーロック組もFBIに侵入し、片っ端から地球人(白人及び黒人アメリカ人)を瞬殺。国連支給のベルトの仕込み剣で立ち向かったウェズリーだったが、ケイワイの自爆行為(文字通り)で命拾いし、ティンガイを連れて香港に帰る。「純情な男だった」とケイワイを思い出すウェズリー。

遂に異星人同士のベッドイン。普通にやった後で「実は構造が違う」と言うティンガイに従い、繭状の物体に巻かれて空中セックスをする2人。『デモリションマン』の未来のそれと同じでその実体は不明である。幸せを満喫するティンガイの脳に行方不明だった弟が現れ、さらわれてしまう。弟はFBI日本支部で拷問されて手首を失い、地球人を憎み、ワーロック星人と結託していたのだ。

ティンガイの行き先を探しに、ソウを連れてウェズリーは小学生の姪っ子の所へ。手を握って念じるだけで居場所を突き止めるというプロフェッサーX並みの特殊能力で見事ティンガイの脳波と交信。力を増幅するためにソウも輪に加わっていたのだが、助ける助けないのやりとりの挙げ句、「ソウの気持ちをわかってあげて。彼女はあなたを愛してるわ」「僕が好きなのは君だ」と会話が怪しい方向に。そんなことで疲労困憊した女子小学生は倒れる寸前に手から光の玉を放出。「この玉に付いて行けば見つかるわ」・・・ってこの子は一体。

弟を騙して殺したワーロック星人と遂に一騎打ち。主人公が誰得メガネ男子の理由は、実はそのメガネが名探偵コナン仕様だったからという無駄に細かい設定。釣り餌そっくりに分裂したワーロック星人はウェズリーの体内に。聖典を使い、ティンガイも体内に入る。苦しむウェズリーに「ツボは知ってるわね!」「うん!」「行くわよ!気海!」と、次々と指定してツボ押しさせるティンガイ。言われてすぐわかるとはさすが中華圏!

ウェズリーを助けるために力を使い果たし、星に戻る決心をしたティンガイ。「毎年7月の好天は夜空の青い星を見て」。(数多い)出典(の一つ)は七夕だったのか! 「ソウに優しくしてね」と最後まで念押しして旅立ったティンガイを思い出すウェズリーの横には勝ち誇った表情のソウが。完。

監督のアンドリュー・ラウはこの後『インファナル・アフェア』で世界的に大ブレイク。それより前にも『欲望の街 古惑仔』シリーズや『風雲 ストームライダーズ』など文句無しの傑作も沢山作ってますが、ヤクザものかと思ったら主人公が保険の外交員になって苦労する話(『男たちの挽歌 外伝』)とか、公道レーサーがヤバくなってタイでだらだらする話(『超速伝説 ミッドナイト・チェイサー』)など、えも言われぬ珍品も沢山あるのでこれからも頑張ってほしいです。