「第3回ほぼA賞」実況中継3

【『小銭をかぞえる』西村賢太

がく「全体点数は低いけど、あさてぃさんが3点付けてますね。訊いてみましょう。どうですか?」

あさてぃ「主人公がと〜っても嫌な人物じゃないですか。でもそれでも最後まで読まずにはいられない、っていうふうにしちゃう力技が凄いですよね。今回は『食べ物』という小道具がいっぱい出てきますけど、その小道具の使い方がうまいですね。洗練されてきていますよ。『2人で3,000円の焼きそば』とかそういうみみっちい感じがうまいと思った。」

じょり「貧乏じゃなくて、貧乏くさいのを書くのがうまいんだよね。」

あさてぃ「3,000円の焼きそばって、本当に貧乏だったら食べられないからね。主人公が語る高等遊民思想みたいなものが、みみっちさと相まってうまく描かれていると思う。」

じょり「タイトル通りに小銭を数えてピザを買うところとかは面白いんだけど、それ以外のところは前作の『どうで〜』と同じでしょ。そこが好き嫌いを分けると思う。」

がく「俺は0点なんですけど、前作と同じままで洗練されてアクが抜けてしまったので、ちょっと拍子抜けというか……。パワーダウンと感じちゃったんですよ。アクがあってこその賢太!みたいなイメージがあって。前作の未収録部分のみを集めました、みたいな印象を受けちゃいましたね。」

たの「俺は逆にアクが抜けたから読みやすくなったと思ったなぁ。」

じょり「ひでんかは『相変わらず最高!』だって。あちゃりくんは『前作も今作もお気に入り。でも小品なので2点にしました』って好意的だね。」

たの「(前作から)まだ清造の全集が一巻も進んでないのが面白いよね!それがツボだったよ。」

じょり「あと岩波と同じ印刷所で印刷しないといけない、ってこだわるところも面白いよね(笑)。てづさんは?」

てづ「特に驚くところは無かった……。今回は清造についての部分があまり書かれていなくて、そこがなぁ……。むしろ逆に清造の部分が無い方が良かったのかもしれない。そうすれば前作との比較を受けなくて良かったのかも。」

たの「前作を読んでなくて今作だけを読んだ人はどうなるんだろう?っていう不安はありますよね。なんでこんなに清造にこだわるのかが、今作だけではわかりづらいと思う。」

あさてぃ「今作だけだと、主人公の男のイヤったらしさしか伝わらないかもしれない。」

がく「今作を読んでる人は前作も読んでいる、っていう決め打ちをしているのかもね。」

じょり「主人公の一人称が『俺』じゃなくて『僕』っていうのも味わい深いですよねぇ(笑)。」

あさてぃ「賢太は10年このまま書き続けたらどうなるのかな?。」

たの「清造の全集が2巻目にいったら感動するな、俺は(笑)。」

「いかないんだよ(笑)!」

こきりこ「全集が出来ちゃったらこの作品が書けなくなっちゃうからね。」

あさてぃ「きっと一生出来上がらないんだよ(笑)。」

じょり「賢太の写真とか見ると……」

あさてぃ「すごい好青年なんだよね、本人は。こんなルックスの人がこんな言動を!?って驚いた。」

がく「リアル男子としての賢太みたいのは、あさてぃさんにとってはどうですか?」

あさてぃ「大っ嫌い(笑)!!!リアルに考えると嫌な人ですよ、この主人公は。」

たの「今回はアクが抜けてイヤさが希釈されて読みやすくて好きでしたよ、俺は。借金のシーンとかマニアを気取るところとか笑いどころは満載ですしね(笑)。人の親をエテ公呼ばわりするところなんて最高ですよ!!」(←鬼)