『怖くない育児』

ここでも既に取り上げた『贅沢なお産』『横森式おしゃれマタニティ』にも登場する、カリスマバースコーディネーターの大葉ナナコ。最近女性誌でも妊娠・出産特集が組まれることが多いですが、そういう記事でも名前を見ないことはないほど、その方面では超有名な彼女。著書は多数ありますが、本書は講談社文庫から書き下ろしで刊行されたもの。

『怖くない育児』という題名の前提として、育児は怖いものだという認識がある。妊娠や出産についての正しい知識を伝えようと開催している講演会やセミナーなどで、あまたの若い女性に会っている著者が、彼女たちのそんな恐怖がどこからくるのかを探り、そしてその恐怖を払拭すべく育児の素晴らしさを書いている。

私生活では5児の母親である著者が、自らの体験を通して、いかに子どもが素晴らしい存在なのかを切々と説いているのだが、全編通して読んでみると、この著者はかなり天真爛漫というか、パワフルでポジティブで、この人自身がきらびやかな光を放っている。『そろそろ産まなきゃ』では、「なぜいま産まないか」「いつ産むのか」といった悩みを抱えた女性たちが多数登場したが、みんなまとめて「だいじょうぶよ〜楽しいわよ〜産んじゃいなさいよ〜どうにかなるわよ〜」と黄金のオーラを従えて、どーんと背中を押しちゃいそうな感じ。

著者自身は会社勤めの経験はないが、現在のバースコーディネーターという職業の必要性を感じたときから、その仕事を自ら創り上げた経験を持つ。“仕事と子育ての両立”という永遠のテーマや「子どもは欲しいけど、経済的に難しいかな……」といった悩みについても、著者のスタンスは非常に単純明快。

子どもがたくさん欲しい場合は、子育て資金を作るために働くしかない。(中略)“子どももたくさん欲しい、仕事もたくさんするぞ!”オーラで、スキルとスタミナを高めるしかない。

自分の子どもにかかるお金は、食費や学費。未来の大人の成長資金は、潔く働いて稼ごう。愛する人の人生のための資金集めという働き方、それはとても楽しい!

そして、やっぱり母親が仕事に出ると子どもは寂しく感じてしまうという問題も、彼女の手にかかれば→〈自転車を壊したり隣の家の金網を壊したり、強硬手段で母親の意識を自分たちに向かせようとした。今から思えば寂しい時はきちんとSOSを出してくれる、なんていい子たち!〉と超前向き。対処策も、手遅れになる前の〈「プチ寂しい」ぐらいのときに〉癒してあげればいいとシンプル。

最初のうちは、この著者みたいにパワーも知恵もあったらいいけど、そんな能天気じゃいられないよ……と思ってたけど、読み終わる頃には「んーなんかやっていけるかも!?」と力がみなぎるような読後感。パワーを分けてもらったみたいで、“太陽のような人”とはまさに著者のようなひとのことを指すのだろう。

他にも育児のヒントがいっぱい。育児の大変さがクローズアップされがちで、それでしり込みしている人も多いだろうけど、それは〈「慣れないから大変」なのであって、「難しくて大変」ではない〉。なるほど、確かに! ただ「大変」とだけ聞かされてたら避けて通りたくなるけど、これならなんとなく積極的に向き合えそうだ。

もっともっと引用したい箇所があって、いっぱいページの端を折ってあるんだけど、子どもが泣き出したのでもうおしまい(笑)。アタマであれこれ考えるのもいいけど、もっと直感と本能を使って妊娠・出産・育児について向き合ってみたい人にオススメ。アタマで考えるのに疲れた人にはもっとオススメ。