クマ、立ちはだかる ―LvsE戦観戦2.クマピッチング―

ナマスタ(生スタジアムでワクワクする)

さて、席にたどりついて落ち着いた頃には、ちょうど試合が始まっておりました。

選手の写真、拡大したり加工はしてみたのですけど、ちょっとピンボケだったり、席の位置がちょうどネットが邪魔をする位置だったりしたので、見づらいかと思いますがご容赦くださいませ。

先発ピッチャーは、ライオンズ・石井一(一久)

今シーズン、セのスワローズからFA移籍した石井。メジャー移籍したり、花形女子アナが奥さんだったりという華やかな実績の上、ちょっとのんびりというか茫洋というか、マイペースな独特のキャラ立ちの選手です。引く手あまたなのに、FAでパを選んで移った人気投手は初めてといっていいくらいですから、パに来てくれた時点で好感度大幅アップなんですけど、今シーズンは打ち込まれることが多く、苦しい投球が続いていました。
が、この日はベテランのプライド。もーーーれつに気合が入っていました。セギノールに一発打たれたものの、3者三振に切ってとったり、イーグルス打線を寄せつけません。



そして、お待ちかね!(って、私が待ちかねたんですけどね、すみません)、今年、無敵の投球を続ける岩隈です。


190cmの長身。ダルに負けない足の長さ。投げ姿の美しさ。
カ、カッコイイ……(溜め息)。

石井にくらべると、立ち上がりの岩隈はややもたつきました。味方の先制点の直後、同点に追いつかれます。
ライオンズファンの声援がこだまする異様な雰囲気の中での20勝挑戦。表情やしぐさにプレッシャーをはねのけようとする硬さが見えます。加えて、マウンドの高さか傾斜が合わないのか、土を蹴って掘ってみたりして…。

7月あたりの試合で、ここでライオンズに打たれたときも、そのようなことを言っていたようなので。

でも、不調のように見えても抑えてしまうのが今年の岩隈です。その後は要所要所で、素晴らしい球が決まりだします。
特に低目の球が見事。決め球がミットに納まる音が、3塁の後ろの私の席まで響いてきて、速いは、制球いいはで、豪打のライオンズ打線も手が出ません。

試合は両投手の好投で5回まで膠着状態に。

このムード、そろそろ何かがおきそうだ…。

と、思った6回。やっぱり試合が動きました。ライオンズ・ブラゼル(1塁手)が小学生でも取れるイージーフライをまさかの落球。ホームランを打たれているセギノールを迎える前にミスが出て、明らかに苛立ちの見えてしまった石井。そこからコンコンと連打され、追加点を取られてしまいます。その後のリリーフ陣も打たれたライオンズは早や終戦ムード。

イーグルスの方は、エース降板後も、いつもはちょっと不安なリリーフ投手達が*1、この日は渾身のピッチングで後ろを抑えての快勝となりました。

岩隈は、圧巻の投球で20勝目。

でわでわ、圧巻ぶりをつたない写真で少々ご紹介。以下は、一投球を連写したのではなく、数回の投球の中でポイントになるフォームになったところをコツコツ撮って、加工してつなげたもんなので、統一感欠けちゃうのですが…。






まず注目していただきたいのは、からまでの頭の位置です。最初から最後まで、アゴが上がっちゃったり、頭が傾いちゃったりするところが全くありません。ずっと、キリリとまっすぐキャッチャーミットに視線を向けたまま。もー、この<キリリ!>にホレボレするわけです…(*^。^*)。
おへその延長線上に頭のてっぺんが乗り、重心がまったくぶれません。これが、バツグンの制球力のもと。

とにかく、クマフォームの見事なところは絶妙な体使いのバランスです。
からまでが特に美しいんですけれど、中でも素晴らしいのが
左右の腕の、肩から肘までがほぼ水平に一直線で、手首から先の使い方も、左右がSの字を横にしたようにバランスがとれています。
足を見ても、両腕の曲げる部分がちょうど両膝の上あたりで、腕が動く揺らぎを膝が吸収します。

体の重心線と、頭・肩・肘・手先・胸(ユニフォームのロゴを見てくださいませ)・腰・膝・足先というポイントをタテヨコに結んだ線が、どれも垂直か平行で、余計な傾きは一切なし。
カンペキなバランスで、非の打ちどころがありません。
手前のネットがちょうどよいラインになるので、比べてみてくださいね。

そして、からはぐっと胸を張って、前に体重をのせていくんですが、フィニッシュまで、タテヨコのバランスがけして崩れておりません。
よっぽど体芯がしっかりしてないと、こんなバランスを保てないはず。これを1試合通して、そして、シーズン通して続けたんだから、今年の岩隈はどうかしちゃってますよ、まったく(笑)。

もし、他の投手のフォーム写真を見る機会があったら、比べてみてくださいね。こんなに頭が動かず、すべてのバランスがカンペキなフォームで投げている選手は滅多にお目にかかれないはずです。

この日は、最初に言ったようにマウンドがしっくり来なかったのか、あたりで、いつもより気持〜ちダイナミックさがないような印象でした。調子の良いときのフィニッシュの、跳ねるような躍動感がやや抑え気味。ちょっと腰を落として慎重に投げているような、春先のダルビッシュの投げ方に近い感じでしたが…。
それでも、コントロールと球威は落とさずに打者を打ち取るあたりが、勝ち星を呼ぶのでしょう。

岩隈の球の打ちづらさがよくわかるのは、次のナカジ*2の写真。
イーグルスに勝ち越された直後の6回裏、2死で走者を3塁においての打席の3球を撮りました。



はファウル。でセンターへの力ないライナーに打ち取られたフォームです。

現在首位打者で、この日は4番を任されたナカジが、3球とも全部同じような、差し込まれて窮屈なフォームになってしまっているのがよくわかります。今年の岩隈は、ここぞという場面では、甘い球がまず来ないのです。
は、の1球前だったのですが、キャッチャーがミットを構えた位置をご覧ください。

のファウルの後、の決め球は、よりずっと低い、膝元に来ていたはずです。ナカジは芯で捉えられませんでした。
次のの写真は、9回裏、イーグルスの投手がストッパーの川岸になったときの、ナカジのファウルです。

体は開いてしまっていますが、ノビノビ打てば、これだけ思い切り振り切る選手。
岩隈のとき、いかに振らせてもらえない球が来ていたか、おわかりいただけるかと思います。

いやいや、期待にたがわぬピッチングを見せていただきました。

そして試合終了後。
20勝達成のヒーローインタビューで、クマ様をお近くで拝見、といそいそネット際に駆け寄ったのですが、なんと、ヒーローインタビューはなし………。

まあライオンズ側からしてみれば、空気読まな過ぎの快挙快投。落胆したファンの気持ちを汲めばしかたのないところでしょうか(笑)。

通路裏の通用口から外を覗いたら、そこには既にバスに乗り込んだイーグルスの選手たちの姿。

でも、面白かった〜

見させてくれた野球の神様に感謝感謝、の一日なのでありました。

*この試合のヤフー動画に行けるURLを貼っておきます。(“ハイライト”をクリック)http://baseball.yahoo.co.jp/npb/schedule?t=d&d=20080922

*1:1点に抑えていた岩隈が降板したとたん、後の投手が9点取られたことがあります。

*2:西武・中島選手