2月3日(日)かなりな雪

よりにもよって雪! わたしは乾期のロサンゼルスに大雨をもたらし、ブダペストに町の交通がストップするほどの10年ぶりの豪雨を呼んだことのある雨ババア。相方の大森望もまたトークイベントを地震で中止寸前にまで追い込んだ天災オヤジ。メッタコンビはよくよく天から嫌われているらしい。
400席ある紀伊國屋ホールの前売りは完売したそうだが、この雪では外出をためらう人も出てくるだろうから、ガラガラな客席をあらかじめ予想し、がっかりしないよう情緒の安定につとめつつ新宿へ。
途中、ゲーセンのUFOキャッチャーで目玉オヤジの人形を5つゲット。そのうち3つをトークの最後に客席に投げるという企み。
開場前、紀伊國屋ホールの舞台に上がり、「少年は決して沈まない。世界ばかりが沈んでいくんだ!」とうろ覚えの台詞を大声で放ち、夢の遊眠社ごっこをして一人感激。芝居好きのわたしはこのホールで一体どれだけたくさんの傑作ステージを目撃してきたことだろう。その舞台に自分が立っていることがにわかには実感できない。長生きはしてみるものである。
来る途中、命と家族の次に大事にしているノートパソコンを、カバンごと電車の網棚に忘れてきてしまった大森さんの精気が抜けている。目に力がない。常に両眼から放たれている意地悪な光が消えている。おおよそ、ゾンビ。きっと、パソコンには厖大な知識と情報だけではなく魂も入れてあったのだろう。
しかし、精彩を欠いたメッタコンビのていたらくを補うかのように、ゲストの石田衣良さんと長嶋有さんが大変面白いトークを自力展開してくれたおかげで、雪にもかかわらずほぼ満席となった客席がどっかんどっかん沸きに沸いたのであった。よかった、よかった。この模様は4月末に刊行予定の『文学賞メッタ斬り! 2008年版』に収録予定。いらっしゃれなかった方は、楽しみに待つが吉。
終演後は居酒屋で打ち上げ。大勢の友人知人の皆さんが来てくれて盛会。途中、昨日47歳の誕生日を迎えた大森さんに花束とケーキの贈呈式ありけり。魂と共に腹の中の黒い何かまで失ってしまったらしい大森さんが素直に喜ぶ様子に驚きを隠せないオデなんであった。おおよそ、善人。このままパソコンが見つからないほうが世のため人のためなんではあるまいか。
そこから陶玄坊、東方見聞録へ流れ、タクシーで帰宅したのは朝の5時。泥酔。おおよそ、廃人。