懐かしの90年代

北村浩子さま
前回からまたまた日にちがあいてしまいました。すみません!
おお、きんたま連発だ(笑)。北村さんに80年代の本を紹介してもらったので、私は90年代の小説を。
『この部屋に友だちはいますか?』(河出書房新社)です。三浦俊彦の小説は、2003年に出た『シンクロナイズド・』と去年復刊された『エクリチュール元年』以外、ほとんど品切。復刊してもらえるとしたらどれにしようか迷ったのですが、梅佳代の『男子』みたいな表紙写真が良い味出してるこの本に決めました。「J文学」帯を見て、90年代ってもう懐かしいんだなと。
この小説の主人公は、仕事よりも恋愛よりも日々新しい友人の発掘にいそしむ友情至上主義者、中川傭一郎。高校時代から、フレンドレター(友だちになってくださいという告白の手紙・ラブレターより濃い)を出しまくって、ゲイの先生に貞操を奪われそうになったり、「フレンド病」「ナカガワ菌だー」と同級生に気味悪がられたりしながらも、自らの友情道をきわめてきました。そんな彼が「クオリティライフ・コンテンポラリー」という友だち紹介所に入会。理想の友だちを手に入れますが、謎の友情ゲリラの攻撃にあい……と、あらすじを説明しても「何それ?」といわれそう。ですが、友だち紹介所のヘンテコなシステムや、いい年した男同士がプラモデルや双眼鏡の話をして“友情エクスタシー”に達するシーンなどかなり可笑しい。それに、当時はゲラゲラ笑いながら読んでいたのですが、再読してみたら「これってmixiじゃん」と思うところも多々あり。早過ぎた小説なのかもしれません。
三浦俊彦は論理学者でもあります。私の祖母の口癖は「あんまり勉強しすぎると、頭がおかしくなるけん、そげん勉強せんでよか」だったのですが、まさに勉強しすぎておかしくなった人だから書ける小説という感じ。褒め言葉ですよ、念のため。頭が良すぎて変態の森へ行っちゃった。その変態の森が魅力的。もっと読まれてほしいし、新作も出してほしいなあというわけで挙げてみました。知らなかったけど、最近ではドラマ「エジソンの母」の監修もしているらしいし。復刊するならば今!
古い本が続きましたが、だんだん現代に近づいてきたので、このへんで新しい本に移りましょうか。今年も面白そうな新刊がいっぱい出ていて、積読棚がすごいことになってるんですが、北村さんの2008年1月〜2月発売のオススメ本を教えてください〜。

石井千湖