『そろそろ産まなきゃ』

そろそろ産まなきゃ 出産タイムリミット直前調査

そろそろ産まなきゃ 出産タイムリミット直前調査

またしてもおもしろい本読みましたよ!

って著者はこの「書評王の島」でも執筆中(1回で止まってるよ〜)の三浦天紗子さんなので、「どーせ仲間内の応援レビューでしょ?」とうがった見方をされちゃうかもしれませんが、いやいや! 面識の有無に関係なく、純粋にオススメしたい1冊です。

子どもを産む/産まない、産むのならいつ? といった選択は、女性にとって永遠に悩みの種。なぜなら“正解”がないうえに、やり直しがきかないから。さて、どうしよう? と漠然と悩んでいても埒があかない。妊娠出産育児をめぐる最新事情を取材して、それを材料によーく考えてみようというのが本書のテーマ。著者自身も同じ悩みをもつ女性なので、産婦人科医や男性不妊外来への丹念な取材や、20〜40代女性100人へのアンケートなどによって、知りたいツボをもれなく押さえているところがいい。

経産婦であるわたしも、言われてみて初めて意識したトピックがたくさん。いまの未妊女性の多くは「あまりに妊娠について知らなさ過ぎる」という指摘にはドッキリ。わたくしも妊娠するまで婦人科にかかったこともありませんでした……。いまや子どもを持つには、セルフケアをして自分の体(そしてパートナーの体)をよく知ることが必要。

それから、芸能界やキャリアウーマンなどのあいだでよく見られる「40代での初産」。一昔前ほどには珍しくもなく、30代まではがっつり働いて、子どもはそこからでも平気かな〜と考えておられる方もいらっしゃるかもしれませんが、厚生労働省の人口動態統計では平成17年に40歳以上で第一子を産んだ母親は【6000人超】だそうです。この数字をどう捉えるかは個々によって違うかもしれませんが、わたしは予想より圧倒的に少なくて驚愕しました。全国で6000人しかいないの?って。さらにはイギリスで市販されている「受胎能力検査キット」なるものの話も興味深い。

また、妊娠を取り巻く倫理観についても大いに考えさせられる。アメリカでは代理母制度が進んでおり、“親友の代理母”や“娘の代理母(すなわち孫を自分で産む)”という例もあるそうな。ニュースなどで聞いたことはあるけれど、自分の身に置き換えてみると果たしてどうだろう。自分が代理母だったとして、文字通りハラを痛めて産んだ子どもに、必要以上の情をかけてしまわないだろうか。わたしは、十月十日ものあいだ一心同体だったのに産んだ瞬間に身ふたつになってしまったことが、実はとてもさみしかった(もちろんうれしくもありましたが)。自分の子でもそうなのに、人の子を産んで、育てるのは別の人なんていうのはさみしくないんだろうかと思ってしまった。しかし一方で、そうしてまでも自分の子どもを強く強く望んでいるひとたちがいることも事実。

この本を読みながらはじめて「私はなんて能天気に子どもを持ってしまったんだろう」と、自分の行き当たりばったり加減にちょっと焦りました(苦笑)。経済力とかパートナーとの関係うんぬんとか全然考えてなかった……。

あげく、実はまったく子ども好きじゃなかったワタクシ(爆)。むしろ「子ども嫌い」とはっきり言ってました。そんな私がなぜ子どもを持ってみようという気になったのか。思い返してみると、夫や双方の両親が(私にプレッシャーにならない程度に)子どもを楽しみにしていたから。その様子を見て「ああ、わたしが産む子どもは大歓迎されながら生まれてくるんだな。このひとたちの喜んだ顔が見たいな。それはきっとしあわせなことなんだろうな」と思ったからかもしれません。他人事のように聞こえますが、わたしとしてはかなり前向きになったのです。

なんだか長くて支離滅裂になってしまいましたが、これから子どもをと考えているひとはもちろん、すでに出産を終えたかつての当事者たちでも、相当に刺激的な1冊。リーダビリティはものすごく高いのですが、一文読むごとに考え込んでしまって、結構時間をかけて読み終えました。具体的に出産について悩んでいる女性たちへのインタビューも数例収録されているので、参考になるところも多々あるでしょう。